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宗教とは何か?未来の人類・未来の学問のために

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2021/9に鎌倉の建長寺で開催されたZen2.0に登壇した竹倉氏。このイベントを契機に、仏教会の方々との繋がりもますます広がったようです。

また、このイベントに先立つ2020/10には日蓮宗大本山の池上本門寺に呼ばれ、お坊さん達を相手に「宗教とは何か?」について講演したそうです。まさに釈迦に説法とはこのことですが、大好評だったとのこと。

この時の内容をベースに一般公開された講演「宗教とは何か?未来の人類・未来の学問のために」が2021/11/23に開催されました。

11月23日、田園調布のいずるばにて、音と光lecture#1「宗教とは何か:未来の人類、未来の学問のために」というトークをします。一部のカルト宗教や原理主義の影響もあり、いまではすっかり「怪しいもの」「危険なもの」の代名詞となってしまった「宗教」。一方で、意外なことにそこには人生をwild & sexy に彩り、我々のQOLを爆アゲしてくれる文化資源がたくさん埋蔵しています。そうしたリソースをいかに活用すればいいのか。すると何が起こるのか。そんな話をします。

竹倉史人Facebookより

東京大学で宗教学を学び、それから独立研究者として興味の赴くままにクロスジャンルのテーマを深堀してきた彼ならではのユニークで深い洞察に溢れた90分。

以下に講演の要旨をメモしておきます。

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現代の「宗教」のイメージは地に落ちた

いま「宗教」と言うと、オウム真理教事件の影響もあり「胡散臭い」「カルト」「洗脳」といったネガティブなイメージを想起する人が多い。

人間には「恒常性バイアス」と呼ばれる、自分に都合が悪い、理解できない情報を無視したり、過小評価したりする心理的特性がある。これにより、その人の知識に適合しない事象は超常現象と区分されて排除されることになる。

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大学での研究の限界と独立研究者としての道

東大では自分が学びたいことを存分に掘り下げる機会があると期待して入学したが、そこでの学問は細分化された既知の領域をこねくり回しているだけであり、大学にとどまって研究する限界を知った。

今の知識に納まりきらない部分を扱うのが本当の学問だと考え、独立研究者として自由に自分の関心のあるテーマを研究する道を選んだ。

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宗教現象に見られる恒常性バイアスの事例

宗教について考えるときに、直視すべき2つの重要な現象がある。「声を聴く」体験と「前世の記憶」である。

ソクラテスは幼少期の頃よりダイモーンと呼ばれる存在の声を聴いていた。ピタゴラスは前世の記憶を持っており、霊魂は肉体という墓場に閉じ込められていると主張した。

ソクラテスの哲学、ピタゴラスの数学は現代でも歴史で語り継がれている功績だが、彼らが体験した超越者からの「声」や前世の記憶については現代の知識の範疇外のため、恒常性バイアスによりスルーされている。

しかし、こうした事象は古今東西を問わず、世界中にありふれている現象であり、実は宗教とも深く関わっている。

超越者からの「声」

610年に中東の洞窟で商人が瞑想中に「巻物を読め」という声が聴こえた。声の主は天使ガブリエルだと言う。自分にはない知識が次々と声から与えられるため、この商人は自分は神からの声を預かる「預言者」だと自覚し布教を始める。最初の信者は声を書き留めていた奥さん。この商人がムハンマドであり、彼の奥さんが書き留めたのがコーランである。今や世界に18億人の信者がいるイスラム教の起源は「声」から始まった。

1838年、大和国で中山家の長男、秀司の病を回復させるために山伏による祈祷が行われた。このとき、憑祈祷の依り坐が不在だったため、母の中山みきが急きょ代わりを務めることに。すると、「天の将軍」と自称する神がみきに憑依し、別人の人格となった。この声に導かれて始まったのが天理教。

1424年のフランスの農村。庭で遊んでいた12歳の少女が突然、「王太子シャルルを助けてイングランドに占領されていたフランス領を奪還せよ」という大天使ミカエルの声を聴いた。当時、イングランドとの百年戦争で劣勢だったフランス軍はこの少女が聴いた声に従って戦い、劣勢を挽回して戦いに勝利し、フランスという国が存続することができた。この少女がジャンヌ・ダルク。

現代でも広く信仰されている宗教の始まりや、歴史を塗り替えるような出来事の発端には、こうした「超越者からの声」を聴くという現象があった。この現象はいったい何なのか?

現在の精神医学、脳科学では説明できないため、今は単なる「超常現象」とされている。

前世の記憶

ピタゴラスも持っていたという前世の記憶も古今東西、普遍的に存在する現象である。これには大きく4つの種類がある。

  1. 大人が想起する前世の記憶
  2. 子供が語る前世の記憶
  3. 退行催眠によって得られる前世の記憶
  4. 瞑想によって得られる前世の記憶

※こうした前世の記憶については、講談社現代新書「輪廻転生」(竹倉史人)にて詳細に解説されていますので興味がある方はぜひご一読をお勧めします。

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人間はビジョンを視るというファクト

「学問は事実のみを扱う」という基本原則がある。ここで重要なのは、ファクトをどう確定するか、ということ。

事実、ファクトが存在する、すなわち「ある」とはどういう状態か?一つは、客観的に実在すること。もう一つは、「心的体験として観測できる」ということ。

その体験が「真実」かどうかは別として、現象として存在することから事実認定できると考える。

「人間が意識変容の状態になり、当人の意識を超えた情報を知覚したり、語りだす現象がある」というのは事実である。そして、こうした現象が社会に大きな影響を及ぼすことがあるのも事実。

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トランス(意識変容)の技法

ユングは、「個性化過程による人格の拡張」として、人間が無意識の領域に目を向けていくと、次第に共感能力が高まり「私はあなたであなたは私」という「集合的無意識」の領域にまで到達すると考えた。 

換言すると、人類がみなで共有している「クラウド領域」があり、人はトランス状態になるとそこにアクセスできるようになるという考えである。そして、そこに「神々」と呼ばれる存在がいて、「霊能力」が発現すると考えられる。

こうしたトランス状態に意図的に至るための技法として、古今東西では集団で歌い踊る儀式や瞑想等の様々な技法が考えられ、伝えられてきた。

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これからの宗教

こうした事実を踏まえて、ここでは宗教を次の通り定義する。

宗教とは、「身体技法を用いて一時的な意識の変容を起こし、通常意識では得られない情報を知覚し、その情報を人生における規範、価値、発見をもたらし、人格を向上させ、幸福度、人生の質を高める資源として活用する文化的な営み」である。

今後は、世俗社会において「宗教のポップ化」が進行していくだろう。これに伴い、宗教を金儲けや人を支配する手段として悪用する人々が増えていくため、こうしたものに騙されないために個々人の宗教リテラシーの研鑽が必須になってくる。

人は、トランス状態になると個人的無意識が見えてくる。この時、心の中の森で、「シャドウ」とも呼ばれるネガティブなもの、モンスターに遭遇する。このとき、人は自分の心の奥底に、自分ではとうてい認めがたい邪悪な考えや意識が確かに存在することを知る。

このモンスターは自分の心にあるネガティブな感情から生まれたものなので、攻撃してはいけない。逆に、モンスターと向き合い、ハグすることで結果としてモンスターは消え去る。こうしてモンスターが消え、自分の一部になっていくことがユングが説いた「統合」である。

こうしたプロセスを経ないで、手っ取り早くテクニックだけで「声」を聴き、「ビジョン」を見てしまうと、オウム真理教のような悲劇が起きる。

学問の役割として、こうした事象が本当なのか?という真偽を追求するスタンスがある。ただ、自分は真偽について問うことよりも、こうした事象によって人がどんな影響を受けるのか、そしてそこからどんな価値が生まれているか?ということを丁寧に観察して記述する役割により関心がある。

今後は、真偽の議論は次第に飽和して、むしろこうした「宗教」を人間にとっての有益なリソースとしてどう活用していくかというフェーズに進んでいくことになるだろう。

フラワーアーティストの塚田有一さんによる活け花

ーーー

ここまでが講演の概要です。

「宗教とは?」と聞くと構えてしまうテーマですが、ユーモアを交えながら、終始リラックスした雰囲気の中で、分かりやすく明快なファクトとロジックで独自の「宗教」の解釈について示されて、様々な思考を巡らせる貴重な時間となりました。

また、講演の後は、会場の活け花を準備したフラワーアーティストの塚田有一さんとボディワーカーの藤本靖さんを交えた3人でのトークセッションもあり、更に考えが深まりました。

ちなみに、この3人は2020/2に同じ会場で開催されたイベント《人類学がひらく縄文の神話世界》でも同じ顔ぶれで登壇しています。

この時、竹倉氏は「土偶を読む」の草稿があったものの、世の中に発表する機会が得られずに困っていたところ、イベントで出会った藤本さんが晶文社の編集者を紹介してくれて、それが契機となってベストセラー「土偶を読む」が生まれたそうです。

現在、竹倉氏は「土偶を読む」の続編を執筆中とのことでしたが、その次はぜひ「宗教とは?」に応える本を執筆して欲しいと思います。

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