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成功の実現

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読書メモ
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中村天風という人を知っていますか?

明治9(1876)年生まれ。

日露戦争の軍事探偵として満蒙で活躍。帰国後、当時不治の病であった肺結核を発病し、心身ともに弱くなったことから人生を深く考え、人生の真理を求めて欧米を遍歴する。

一流の哲学者、宗教家を訪ねるが望む答えを得られず、失意のなか帰国を決意。その帰路、奇遇にもヨガの聖者と出会いヒマラヤの麓で指導を受け、「自分は大宇宙の力と結びついている強い存在だ」という真理を悟ることで、病を克服し運命を切り拓く。帰国後は実業界で活躍するが、大正8年、病や煩悶や貧乏などに悩まされている人々を救おうと、自らの体験から“人間の命”の本来の在り方を研究、「心身統一法」を創見し講演活動を始める。

この教えに感銘を受けた政財界など各界の有力者の支持を受け「天風会」を設立。その後50年にわたり教えを説く。

東郷平八郎、原敬、北村西望、松下幸之助、宇野千代、双葉山、稲盛和夫、広岡達朗など、その影響を受けた人々は多様で、自らの人生、事業経営に天風哲学を活かしている。

昭和43(1968)年、92歳で生涯を閉じる。

天風会ホームページ

こう書いてあると「ふーん」という感じですが、彼の講演録をまとめた「成功の実現」を読むと、事実は小説より奇なりを地で行く、まあ波乱万丈な人生を生きた人だということが伝わってきます。

Amazonで86件のレビュー評価が星5つ中の4.6という口コミは半端ないです。

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破天荒な人生のエピソード

一つひとつのエピソードがとにかく破天荒で面白い。

結核で死にかけて明治時代に単身でアメリカ、ヨーロッパへ渡って2年間放浪した挙句、絶望の末に日本に帰る途中で立ち寄ったエジプトで出会ったインド人にインスピレーションを感じ、ついて行った先のヒマラヤ山麓で2年半のヨガ修行で悟りを得て、そこから日本への帰路で上海で出会った孫文を助けて辛亥革命に参加とか、あの時代にそんな日本人がいたなんて!

ほかにも、戦争中に狼の一群に遭遇して木の上で1週間以上生活した話、ヒマラヤ山麓でひとり座禅を組んで修行中に気配を感じて目を開けたら眼前の虎と目があった話、炭鉱の反乱を鎮めるために単身でヤクザに乗り込んだ際に鉄砲玉が当たらない話など、マトリックスのネオが覚醒したシーンばりのエピソードの連続にぐっと引き込まれます。

1891年 九州柳川藩主の一門で祖父が伯爵という家柄ゆえに15歳で従五位の勲章を得る。

1892年 福岡の修猷館中学に在学中に喧嘩で出刃包丁で相手を刺殺、正当防衛で無罪放免。

1904年 日露戦争で軍事探偵だったときにコザック騎兵に捕まり死刑宣告を受けて銃殺寸前に、同志の投じた手榴弾に吹き飛ばされて急死に一生を得る。また、万里の長城で偵察中に狙撃され、飛び降りたはずみで意識不明数十日の重症を負う。選抜された屈強113名の軍事探偵のうち、生還者は僅か9名のみ。

1906年 肺結核を発病し、当時の最高権威だった北里博士の治療を受けたが好転せず。

1909年 「座して死を待つよりも」と救いの道を求め、身分を偽って病身をおしてアメリカへ。コロンビア大学で医学を学ぶ。その後、ロンドンでH・アンデントン・ブリュース博士、フランスでリヨン大学のリンドラー博士、ドイツで哲学者ハンス・ドリュース博士に学ぶが、求める答えに出会えず。

1911年 帰郷を決心し、帰路の途上、カイロのホテルで偶然にヨガの大聖人カリアッパ師に巡り合う。同師に連れられ、ヒマラヤ山脈の山麓のゴーグ村で二年数カ月の修行を経て、悟入転生の新天地を切り拓き、日本人初のヨガ直伝者となる。

1913年 帰国途上の上海で中国特命全権公使の山座圓次郎氏に会い、彼の要請で第二次辛亥革命に参加し、孫文を助けるも挫折し帰国。

1919年 突如感ずるところがあり、当時務めていた東京実業貯蔵銀行の頭取、大日本製粉の重役をすべて辞任して、毎日、上野公園や芝公園で辻説法を開始。検事長の向井巌に見出され、同氏の紹介で時の首相、原敬に出会う。原氏をして、「この人は大道で講演をさせておく人ではない」と言わしめる。

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松下幸之助、稲盛和夫が門下で学んだ理論

数奇な運命を辿った後、日本の実業界で成功し銀行の頭取まで務めた彼は43歳にして突然、全ての地位と財産を投げ打って公園で辻説法を始めたそうです。これがすぐに評判となり、彼が創設した統一哲医学会(今の天風会)の会員数は100万人を超え、政財界、文化人の多くが門下生となったとのこと。

ロックフェラー三世や松下幸之助、稲盛和夫といった大物が感銘を受けたという彼の教えとはどんなものだったのか。本書は彼の講演内容がそのまま書かれているので平易な言葉でわかりやすく解説されています。

p.243 翻然としてたった今から、「俺は今まで肉体だと思ったがそうじゃなかった。俺は今まで心だと思ったが、そうじゃなかったんだ。見えない気体、いわゆる霊魂、これが俺なんだ」と考えたとき、もう今までとは全然違った気持ちで自分の肉体を考え、心を考えることができやせんか。
 つまり、第三者の位置に立って、客観的に自分の肉体や心を考えるということになると、健康も運命もどれだけ違った方面へとよりよく働きだすかわからない。

p.362 きょうの話を聞いて、すっかりわかったろう。心というものは、万物をつくる宇宙根本主体の無限の力を自分の生命に通ずるパイプと同様なものだということが。心の思い方、考え方というものは、これまた金物をつくるときの鋳型と同じなんだ。(中略)

 だから、ほんとうに幸福な人生を生きたいと思ったら、何よりも忘れてならない必要な人生の心がけは、自分の命に対する自己認証を高度にすることだよ。自分の生命に与えられた力は一切の生物を凌駕して強い力をもってる、いわば力の結晶と同様のものだという考え方が断固として自分の心のものにならんかぎりは、ちょいとした風邪ひとつひいても、それを長引かし、わずかな出来事にもすぐ心は、まるで木の葉が大海原の大きな波に弄ばれると同じになるぞ。

人間の実態は体という目に見える肉体でもなく、心でもないということを彼はインドの修行を経て悟ったと言います。

「肉体は本当の自分が生きるための道具」でしかなく、「自分の命の本当の主宰権を持っているのは肉体でも心でもなく、見えない気体、日本語では霊魂、英語ではスピリットというものが主宰権を持っている」ということが「ちょうど夜明けがだんだん明るくなるように自然と心のなかにこの気持ちがはっきり自分でキャッチすることができるようになる」と語っています。

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潜在意識という最も安心のできる、信頼性のある大きい力

p.375 目に触れるすべての物は一切合財、宇宙の自然創造物以外はみんな、もうどんなものでも、ちりっぱ一枚でも人間の心の中の思い方、考え方から生み出されたものじゃないかい。それ以外の物があるはずないもの。
 それがそうだとわかったら、あなた方の一生も、またあなた方の心の中の考え方、思い方で良くも悪しくもつくりあげられるもんだということがすぐわかってくるはずなんだ。(中略)

 自分の念願や宿願、つまり現在自分がああなりたい、こうなりたいと思っていることが、叶う叶わないということは、それが外にあるのでなくして、みんなあなたたちの命のなかに与えられた心の思う力、考える力のなかにあるんだ。

p.381 そもそも心というものの行う思考の直接の源は、多く言うまでもなく意識ですね。そして、その意識に実在と潜在の二つがある。そして実在意識は思考や想像の源をなして、潜在意識は力の源という役割なんだ。(中略)

だから、潜在意識はほかから入ってくる印象の貯蔵所であると同時に、また経験したことをしまっておく倉庫でもある。
 もっと簡単にわかりやすく言うと、潜在意識は人間の生命を生かし、また守る貴重な役割を実行すると同時に、実在意識の思念するものを現実化するよう自然に努力をおこなう傾向がある。

p.383 それからもうひとつ、信念煥発に必要なことを注意しておく。
 それは「暗示力の応用」だ。わかりやすく言えば、いま教えたとおり、心に映像をはっきり絶え間なく連続的に反復する必要がある。(中略)

 ただ、注意深くしなければならないのは、その映像が時々ピンボケになるからね。ピンボケにしない要領は、その想像の映像をできるだけ興味を十二分に加味して描いてごらん。興味ができなかったら楽しみを。すると、むずかしいと思える観念集中が存外やさしくできる。
 心の統御に対するこの技術に熟達すると、潜在意識という最も安心のできる、信頼性のある大きい力をもつものに自分の命をぐっとお任せしたことになるんだ。

このくだりを読んでいて、はたと思い出しました。縁あってMBA留学というオプションがあることを知り、20代後半になって英語を本気で勉強し始めた頃。当時の僕はTOEIC600点ほどで英語力からしてMBA留学なんて夢のまた夢。

そもそも留学するお金などある訳もなく、社費留学するには数十倍という難関をくぐり抜けて選抜される必要があり、仮に選ばれたとしても世界Top20に入る超難関の大学院から入学許可を得るのは更に狭き門という状況でした。

いま思えば無謀としか思えない挑戦でしたが、なぜか自分では「必ず自分はアメリカに渡ってMBAを取得する」という信念というか覚悟を持って机に向かっていました。

その時、机には憧れだったUCLAのキャンパスの写真を貼って、日々、その写真を眺めてはGパン、Tシャツで自転車に乗ってリュックを背負って通学する自分の姿を夢に見ていました。時間はかかりましたが、様々な出会いや幸運が重なって、夢は現実に。

最近では忙しさにかまけて流されるような時間の過ごし方をしていないか。当時の自分を思い出しながら、改めていま掲げるべき目標を心にしっかり描いてこれからの人生を生きてみようと思い直しました。

面白くて、勉強になって、元気が湧いてくる本です。

■もう少しお手軽に天風哲学に触れられる入門書

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