いま思うことグローバル

人口当たりの死者数から見えてくる新型コロナウイルスの実態

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新型コロナウイルスはWHOのパンデミック宣言により、世界中での感染拡大が本格化する段階に入ったようです。連日のようにメディアではどの国で新たに感染者がxx人確認されたとか、どの国で初めて死者が出た等といった情報が溢れています。

国ごとに様々な事情が異なる中で単純に比較するのが難しい中で、比較的に確度が高いと思われるのが、新型コロナウイルスによる死者数と考えます。

そこで、国ごとの人口100万人当たりの死者数を計算して比較することで、新型コロナウイルス被害が深刻な国と比較的に抑制できている国の傾向をみてみました。

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週次の定点観測の状況

日本で緊急事態宣言が発令される前後から毎週日曜日に全世界の人口当たり死者数の推移を定点観測しています。

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各国の感染者数を見ても深刻さの実態がわからない理由

新型コロナウイルスの感染者数はその国の検査体制の整備状況や検査に対する政府の姿勢によって大きく左右されるため、実際の感染者数と対外的に広報されている感染者数とは大きな乖離があると思われます。

また、当然ながら国ごとに人口が大きく異なるため、感染者数を比較しても国ごとの被害の深刻度の比較にはなりません。

例えば、韓国ではドライブスルー方式まで含めて気軽に多くの人が検査を受けられる体制が整っており、3/13の報道では21万人が検査を受けたと報じられています。そのため、検査が十分に受けられない国々と比較すると韓国の感染者数は多めに報告される傾向があると考えられます。

アメリカの新型ウイルス検査は「失敗している」 保健当局トップが認める

米誌アトランティックは、独自計測でこれまでの検査人数を約8000人としている。一方、米政治ニュースサイトのポリティコは、保健当局の説明を聞いた上下両院の与野党議員の話として、検査済みの人は1万人以下だと報じた。

アメリカとは対照的に、韓国では21万人以上が検査を受けた。現在も毎日2万人近くを検査している。イギリスでは2万9700人以上が検査を受けており、1日の検査人数は1000人を超えている。

2020/3/13 BBC NEWS JAPAN

一方で、日本では3/4時点で8,000件程度の検査にとどまっているようです。CNNによると、ウイルスの拡散予想を目的とする統計モデルを作成している北海道大学の西浦博教授は「実際の感染者数は公式統計の10倍に上る可能性がある」とコメントしています。

日本で発表の感染者数は「氷山の一角」、専門家が検査態勢の強化促す

新型コロナウイルスの感染拡大が続く日本で、政府の対策や検査のやり方に疑問を投げかける専門家が相次ぎ、実際の症例数は発表よりずっと多いのではないかとの不安が広がっている。

隣国の韓国では、政府が検査態勢を強化して数万人の検査を行った結果、これまでに確認された症例は6000例を超えた。一方、日本政府は1日に3800件の検査が可能になったとしているが、厚生労働省によれば、4日までに実施された検査は8111件にとどまる。

4日に日本で新たに確認された症例は33例に上り、1日当たりの増加数としては、流行発生以来最多となった。

この数字について医療ガバナンス研究所の上昌広理事長は、氷山の一角にすぎない疑いがあると述べ、実際の数字は報告された症例数を大幅に上回っている可能性が大きいと指摘した。(中略)

北海道では知事が緊急事態を宣言した。道内の感染者数は公式統計では80人台とされているが、北海道大学の西浦博教授は、実際にはその10倍に上る可能性があるとの見方を示す。西浦氏は、ウイルスの拡散予想を目的とする統計モデルの作成で政府の対策を支援する立場から、感染者数の推定は、流行の発信源となった中国の武漢市の状況と一致すると話している。

2020/3/6 CNN.co.jp

PCR検査で野党指摘「検査能力に比べ実施件数少ない」

11日の国会で、新型コロナウイルスの検査件数をめぐり、野党側が「検査能力に比べ、実施した件数が少ない」と指摘したのに対し、加藤厚生労働大臣は「検査を抑制しているわけではない」などと反論しました。

加藤大臣は、新型コロナウイルスのPCR検査について「1日最大6000件が可能」などと説明していますが、野党側は、厚生労働省から入手した1日あたりのPCR検査の件数を明らかにしました。それによりますと、保険が適用された今月6日は1200件あまりでしたが、7日はおよそ860件、8日はおよそ670件、9日はおよそ1100件だったということです。(中略)

加藤大臣は、「検査を抑制しているわけではない。必要な検査が出来るよう努力していく」などと応じました。これに対し野党側は、「海外と比べても日本の検査件数は少ない」などと反発し、審議が一時紛糾しました。

2020/3/11 TBSニュース

新型コロナ検査可能数、月内に日7000件 病床は逼迫も

国が新型コロナウイルスの検査可能態勢拡充を急いでいる。当初は最大でも1日約1500件どまりだったのが、3月中には約7千件に増える見通しだ。各地の地方衛生研究所(地衛研)での9日分までの実施件数は計約2万件となった。一方で感染者が増えている地域では病床の逼迫もみられ始めた。今後感染が急拡大すれば、県境をまたいだ対応も求められる。

新型コロナの検査は全国83カ所の地衛研や大学、民間検査機関などが担っている。

2020/3/13 日本経済新聞
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各国の人口100万人当たりの死者数に注目する理由

そこで、各国の人口100万人当たりの新型コロナウイルスによる死者数を比較してみました。

もちろん、新型コロナウイルスが原因で亡くなった人数を正しく把握するのは難しく、例えば本当は新型コロナウイルスが引き起こした肺炎で亡くなっていても単なる肺炎による死亡とカウントされるケースもあるでしょうし、国によってデータの信憑性は異なります。

とはいえ、今の状況で高熱で病院に運び込まれて重篤な状況な患者がいた場合はまず新型コロナウイルスを疑って最優先で検査をするでしょうから、仮に死亡した後からでも陽性反応が確認されれば新型コロナウイルスによる死亡としてカウントされる可能性が高いと思われます。

したがって、人口100万人あたりの新型コロナウイルス死亡者数を国ごとに比較することで、被害の深刻さや封じ込め状況、医療の有効性といった傾向が見られると考えます。

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浮かび上がった新型コロナウイルスの国ごとの深刻度合い

データソース

データは、各国の機関やメディアの情報をウォッチして毎日データを更新・発表しているWorldmeter社のデータを利用しました。

Worldometer is run by an international team of developers, researchers, and volunteers with the goal of making world statistics available in a thought-provoking and time relevant format to a wide audience around the world. Worldometer is owned by Dadax, an independent company. We have no political, governmental, or corporate affiliation.

Worldmeter社のウェブサイトより

算出結果

上記のデータをもとに人口100万人あたりの新型コロナウイルス死亡者数を計算した結果は次の通りです。

人口100万人あたりの新型コロナウイルス死亡者数グラフ(2020/3/15時点)

突出して高いのがイタリア(23.8)、以降はイラン(7.3)、スペイン(4.2)、中国(2.2)、スイス(1.5)、韓国(1.5)、フランス(1.4)と続きます。

震源地の中国をはじめ、比較的初期の頃から感染者数が多かったイランや韓国に加えて、最近になって急激に感染が広がっている欧州、中でもイタリア、スペイン、スイス、フランスは死者の割合が大きいことから、急増する感染者数に対して医療機関が十分に機能できていない懸念が想定されます。

また、フランス(1.4)の半分以下とはいえ、オランダ(0.7)、ノルウェー(0.6)、香港(0.5)、スロベニア(0.5)、レバノン(0.4)、アイルランド(0.4)、ギリシャ(0.4)といった欧州周辺の各国でも比較的に混乱が大きいと思われます。

一方、アメリカは0.181、日本は0.173となっており、被害が深刻な中国、韓国、欧州各国に比べると今は抑制できているようです。

ただし、この数値は幾つかの見方があるため、今後も注視が必要と考えます。

  • ポジティブな見方
    • 人口数の割には死者を低く抑制できている
    • 重篤な患者を治療し、命を取りとめる医療が高水準で機能している
  • ネガティブな見方
    • まだ本格的な感染前の段階であり、今後、感染者数が増えると同様に死者数も増加するリスクあり
    • 流行のピークを過ぎたという中国が2.2に対して日本は0.17のため、日本では今の10倍ほどの死者数が発生する可能性あり
    • 中国では個人のプライバシーを犠牲にしてまでも個人の物理的な移動履歴を把握し、濃厚接触者に対しては強制的な自宅監禁を課す等、日本では不可能なレベルの中央統制をかけた結果の数値のため、今後の日本政府の対応次第では更に大きな値になる恐れもあり

中国、新型コロナ「流行ピークすぎた」

中国の国家衛生健康委員会の米鋒報道官は12日の記者会見で、新型コロナウイルスの肺炎について中国で新たな感染者が減り続けていることから「中国での流行のピークは過ぎた」と述べた。新型コロナを調査している中国衛生当局の専門家チームのトップ、鍾南山氏は同日の記者会見で「中国以外から流入してくる感染者が問題だ」と話した。

衛生当局は12日、中国本土での累計感染者数が同日午前0時時点(同日本時間午前1時)で前日比15人増の8万793人、死者数が11人増の3169人となったと発表した。新たな感染者15人のうち、湖北省は8人にとどまった一方、6人は中国本土以外から本土を訪問した感染者だった。

2020/3/12 日本経済新聞
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