2020/2/1に田園調布本町IZURUBAにて新春企画《人類学がひらく縄文の神話世界》が開催されました。
新春の面白イベントのおしらせ。信頼するアートディレクターの玉城そのみさんの元に面白5人衆が集います!
今回の目玉は独自の視点で土偶研究を行っている文化人類学者の竹倉史人さん。既存の考古学研究の手法では決してたどり着けなかった叡智に、竹倉さんの体認的洞察が切り込みます。その言説は驚愕&痛快、話を聞いて私は思わず手にしていたノンアルコールビールをこぼしてしまいました!まさに、そこには真に世の中に役に立つ人間探究の入口がありました。
「植物的生命」の原点を、人類学と身体感覚で体験するまたとない機会なのでぜひジョインくださいませ!
2月1日(土)15~18時:竹倉史人氏講演+塚田有一氏の花活け(藤本はアフタートークで登壇)
藤本靖さんのFB投稿より
塚田氏によるライブ花活け
15時の開演までの間、塚田有一氏による花活けライブがありました。
天井から吊るされたポットに活けられた草花がまるで空間に浮遊しているようにゆっくりと回転している様は眺めているだけで心が落ち着きます。
竹倉氏による土偶のモチーフに関する講演
土偶の正体について考えるきっかけとインスピレーション
15時からは竹倉氏の講演。ぴったり17時の終了まで、時にユーモアを交えた研究成果の発表はあっという間の2時間でした。
内容は、昨年の東京工業大学での2回の講演のダイジェストをぎゅっとまとめたほか、土偶のモチーフ解明だけでなく、土偶がなぜ作られたのか、どうやって使われていたのか、といった謎についても斬新な学説を披露。
5000年ほど前から東日本では植物性資源を中心とした食生活が営まれていたそう。そして、日本だけでなく世界中のほぼすべての民族に見られるのが、植物の成長を祈願するための植物霊祭祀の行為です。
ここで竹倉氏が注目したのが「縄文時代の遺跡からは狩猟した獣類の霊魂(動物霊)を祭祀した痕跡は複数見つかっているのに対して、採集した植物の霊魂(植物霊)を際しした痕跡が一切見つかっていない」という事実。
そこで、本当は「植物霊祭祀の痕跡が見つかっていない」のではなく「既に見つかっているのに誰もそれに気づいていない」のでは?というアプローチから竹倉氏の研究は始まりました。
そして、遮光器土偶のレプリカを抱いて一緒に寝ていたある日、この土偶の正体、もとになっているモチーフについて1つのインスピレーションが湧いてきたと言います。
その直感をベースに「土偶は食用植物をかたどったフィギュアである」という仮説を立て、土偶の出現・消滅が縄文人の食生活の変化とどうリンクしているのかを科学的な事実をもとに丁寧に実証したのがこの研究の成果です。
特別冊子「土偶は何をかたどっているのか」
会場では竹倉氏の学説について、研究の理論的な検証部分は省き、代表的な土偶が何をモチーフにして作られたのかを解明した冊子が特別販売されていました。
土偶は縄文時代に作られた素焼きのフィギュアである。古いものは1万年以上前から製作が始まり、2千年前には日本列島から忽然と姿を消した。現在までに2万点近い土偶が発見され、現在でも毎年数十~数百点の土偶が出土している。土偶の学術研究は明治時代に人類学者・坪井正五郎らによって着手されて以来、130年間以上にわたって行われてきた。
土偶は「女性をかたどった像である」とされ, 妊娠・安産や狩猟の成功,病気平癒などの祈願に用いられたとも言われているが(東京国立博物館ホームページより)、これには異論も多く、土偶の正体は日本考古学史上の最大の謎の1つであった。しかし、2017年に着手された人類学者・竹倉史人の研究によって、従来の説とはまったく異なる新事実が続々と発見された。
竹倉が導き出した結論は「土偶は当時利用されていた食用植物(貝類を含む)をかたどった像である」というものである。本冊子では、研究の理論的な検証の部分は省き、竹倉が土偶をどのように解読したかを、そのモチーフとともに紹介してみよう。
冊子「土偶は何をかたどっているのか」より抜粋
冊子では、今回の講演でも紹介されたハート型土偶(オニグルミ)、合掌土偶・中空土偶(クリ)、山形土偶(ハマグリ)、縄文のビーナス(トチノミ)のほか、遮光器土偶(サトイモ)についても詳細な解説とともにそれぞれのモチーフについて明快に解き明かされています。
東工大での学説発表の後、既にNHKや新聞等の複数の取材を受けたそうで、マスコミにて新説が紹介される日も近いかもしれません。
まだほとんどの人が知らない土偶の正体、そして実は同じアプローチから世界のフィギュアに目を向けると世界史の常識をも大きく塗り替える可能性を秘めています。
現在執筆中という博士論文の完成が待ち遠しいです。