先日、この30年の間にアメリカや韓国の賃金が約2倍になった一方で、日本の賃金は4%ほどしか上昇していないという衝撃的なニュースがありました。
こんな状況下において日本円をただ銀行に預けておくことは最大のリスクと言えるでしょう。
今後の資産運用のポートフォリオを考えると、株式投資に加えて暗号資産(仮想通貨)やNFTなどへの分散投資にもトライする時期が来ているように感じ、実際に始めてみました。
世界における日本の地盤沈下の現実
ここ数年間、海外出張をする度に海外の物価の高さに驚くことが多かったですが、最近、衝撃的なファクトに立て続けに触れて、世界の中で日本という国が地盤沈下している実態を改めて痛感しました。
OECDのデータによると、ドル換算した日本の賃金はアメリカの56%しかなく、過去30年間の間にアメリカの賃金は48%上がった一方で日本はたったの4%しか上がっていないそうです。
また、朝日新聞には同じソースと思われるこんな記事も。
経済協力開発機構(OECD)の2020年の調査(物価水準を考慮した「購買力平価」ベース)によると、1ドル=110円とした場合の日本の平均賃金は424万円。35カ国中22位で、1位の米国(763万円)と339万円も差がある。1990年と比べると、日本が18万円しか増えていない間に、米国は247万円も増えていた。この間、韓国は1・9倍に急上昇。日本は15年に抜かれ、いまは38万円差だ。日本が足踏みしている間に、世界との差はどんどん開いていた。
朝日新聞digital
世界の旅行者からすると、日本は安全で人々は礼儀正しく、美味しいものが安く食べられて、電車は時間通り運行されて、豊かな自然に溢れていて…と非常に魅力的な場所に映ることでしょう。
政府を挙げて海外からの観光客を誘致している一方で、皮肉なことに物価が向上しすぎて日本人が締め出されるような事態が既に起こり始めています。
例えば、スキーヤーなら一度は滑ってみたいスキー場の1つ、北海道のニセコ。僕も2017年に家族で訪れて素晴らしい時間を過ごしました。
ところが、ここ数年間で世界中から富裕層が殺到した結果、ホテル代は最低でも1泊数万円からという値付けになり、日本人は簡単には訪れられない場所になってしまいました。
今後、こうした相対的な日本人の購買力の低下を解決するためには大胆かつ本質的な政策変更でもなされない限り、残念ながらこのトレンドは避けられないでしょう。
われわれ個人としての防衛策を考えると、資産運用について見直すこと、特に日本円を銀行にただ預金しておくことだけは避けるのが賢明です。
株式投資から暗号資産への第一歩
僕が株式投資を始めた1990年代後半は株をやっている人はごく少数で、株というと投資というよりも投機というイメージが一般的でした。
まだほとんどの人が手を付けていなかった株式投資をコツコツと続けてきた結果、資産は3倍ほどに。銘柄によっては買値の10%程度まで下がったことも多々ありましたが、信じた銘柄に投資して保持するBuy & Holdを基本とした「ほったらかし運用」でも10年を超える長期保有なら概ね資産価値は上昇することは歴史的に示されている通りでした。
それから20数年が経ち、今ではNISAやiDeCo、確定拠出年金など、日本政府として国民に対して株式への投資を促す動きが顕著になってきており、株式投資はかなり浸透してきた感があります。
その上で、これからの資産運用ポートフォリを考える時、欠かせないキーパーツの1つは暗号資産(仮想通貨)だと感じています。
1年ほど前にこんなエントリーを書きました。この当時のビットコインは200万円程度でしたが、現在は約700万円です。
もう1つ、いまどき夢見る投資対象といえば暗号資産。こちらもドルコスト平均法で過去に購入していたビットコインとイーサリアムを少し保有しています。
この先、いったいどうなるかは全くの未知ですが、面白くなる方に賭けて放置。
暗号資産のポテンシャル
大銀行がtoo big to failと言われて政府としても経済への影響力の大きさから倒産させるわけにいかないように、暗号資産はtoo popular to ignoreとなってきており、機関投資家にとっても無視できない存在になりつつあるように感じます。
ビットコインの強気要因は大きく2つだ。1つはマクロ経済要因だ。米消費者物価指数(CPI)が毎月のように5%を超え、インフレの上振れ圧力が強まっている。ビットコインはその希少性からデジタルゴールドと呼ばれ、インフレヘッジの受け皿になっている。JPモルガン・チェースは6日付のリポートで「機関投資家は金よりもビットコインを魅力的なインフレヘッジ手段と考えている」と指摘した。
もう一つが企業や機関投資家マネーの断続的な流入だ。19日にビットコイン先物に連動した上場投資信託(ETF)が米国で初めて上場。大口投資家が売買しやすくなった。
日本経済新聞
また、従来の金融資産にはない特徴として、暗号資産はテクノロジーをベースとして技術革新とともに進化し続けていくこと。これにより、派生した技術は少しずつ金融業界のみならず経済や社会のインフラとして組み込まれつつあり、相対的に重要性が高まってきています。
その象徴として、ビットコインやイーサリアムのような基本的な暗号資産の価値はこれからの資産運用で無視できない要素となってきていると思います。
暗号資産のリスク
一方で、暗号資産には従来の金融資産にはない幾つかのリスクがあるのも事実。
資産価値自体のボラティリティの大きさ、悪意のある外部からの攻撃で資産を失うリスク、発展途上のインフラ(資金移動時にアドレスを間違えると一瞬で全額を喪失するリスク等)、各国政府の不透明な規制動向など、ざっと考えただけでも株式投資等と比較した際に不安になる要素は多数あります。
投資は誰もが最初は初心者。本やネットで勉強して基礎知識を得るのは当然です。
ただし、ここにも大きな罠があります。正しい情報、有益な情報はごく一部で、ネットやメディアで多くの人の目に触れやすい情報は信用ならないということ。
そして、いくら勉強だけしていても何も始まりません。
したがって、まずは資産運用ポートフォリオのごく一部、最悪は全額失っても良い覚悟で少額でまずやってみることが肝要です。
株式投資もそうでしたが、まずは自らリスクを取って踏み出すことで自然と情報アンテナが高くなり学びが深まります。
NFT : Non-Fungible Token(非代替性トークン)
暗号資産をベースに派生した金融資産の1つにNFTがあります。
1週間ほど前に、ポケモンカード公認イラストレーターのさいとうなおきさんが初めてNFT作品をFoundation上で出品したところ、13.69ETH(約640万円)で落札され、ニュースになりました。
また、本日はNGO/PLASのエイズ孤児支援とCryptoNinjaが合同で実施していたチャリティオークションで何とGENERATIONS from EXILE TRIBEの関口メンディーさんが14ETH(約640万円)でNFTを落札したというニュースも。
今回のイベントを通じて、リアルタイムかつオープンに入札の状況が公開されるNFTオークションはチャリティとも非常に相性が良いと感じました。
NFTは従来のような額縁に入って自宅に飾れるリアルな絵画等とは違い、あくまでデジタルな資産であり、画像データ等のデジタル資産についてブロックチェーン上で出品者(著作権者)から唯一のデジタルデータ所有者として証明される仕組みです。
今後は画像だけでなく音声や動画等の様々なデジタル資産への適用やリアルな資産の所有者をNFTでデジタル的に裏付ける等の使われ方が広がっていくことでしょう。
NFTの問題点
今や地方移住・暗号資産だけではなくNFTエバンジェリストとなったイケハヤさんが世間一般で言われている様々なNFTの問題点について自身の見解を示しています。
新しいモノには一定のリスクや問題点はつきものです。NFTに限らず、何事も自分なりに勉強して内容を理解した上で、自分に合った付き合い方をしていくことがポイントですね。
また、NFTのインフラ「Hokusai API」を提供する会社代表の原沢さんによる見解も多様な観点からNFTの課題について丁寧に解説されています。
NFTを買ってみた
NFTはまだ黎明期であり、イケハヤさんによると特に日本のNFT市場はまだ世界の数百分の1程度とのこと。
この話題のNFT、理屈では理解できても実際に購入してみないと何たるかが腹落ちしない。そこで、ここ1ヶ月ほど色々な方の作品をウォッチして、いいなと思った作風のアーティストの作品を数年間寝かせたままのイーサリアムで試しに購入してみました。
NFTが革命的だと思うのは、作品が次々と色々な人の手に渡るとその履歴がブロックチェーン上に書き込まれて公開されること、そして最初に作品を作って公開した人には作品が転売されるごとに販売額の10%程度が手数料として支払われるという点です。
従来のアートは最初の値付けが全てで、その後に価値が上がって転売されても作者への還元はありませんが、NFTでは自動的に作者へ還元される仕組みが埋め込まれている訳です。
これにより、作者とコンテンツ保有者が一緒に作品の価値を高めようというインセンティブが発生し、二次流通を盛り上げようとするコミュニティも自然発生しています。
暗号資産の延長の資産運用としても面白い分野だと思いますし、単にコレクターとして推しの作品を集めて支援するという楽しみ方もできます。
NFTを作ってみた
NFT作品を買った後は自分でも実際に作ってみたくなりました。
といっても、イラストの才能がある訳でもなく、どうしたものかと思案した結果、今まで各地を旅行した時の写真をNFT化してみることを思いつきました。
世界最大のNFTマーケットであるOpenSeaで試しに1枚、NFT作品を作成したところ、驚いたことに作品をNFT化して公開するだけであればコストが一切かからない!
最初に販売する時には初回のみの手数料が$100ほど(ETH建てで時間帯によって刻々と変化)かかるため、今のところはバーチャル美術館に展示して楽しんでいるだけですが、これからも色々な楽しみ方が広がっていくことでしょう。
今後のマーケット成長が楽しみです。
ちなみに、このNFTのバーチャル美術館は、本物の美術館のように仮想空間上の美術館の中を自分で歩いて作品を鑑賞することができます。VRゴーグルにも対応。
こちらからどうぞ!
1週間後にはボクセルアートのNFT化にチャレンジ!
NFT購入について確定申告で気をつける点
暗号資産は確定申告時に注意が必要です。
まず、一般的な資産と比べて歴史が浅いため、申告分離課税の仕組みが適用されず、雑所得扱いになります。
また、特に気をつけるべきは、暗号資産でNFTを購入した時点でその暗号資産に含み利益があれば(過去に安く購入した暗号資産のおかげで時価よりも安い値段で購入できたという考え方に基づいて)課税所得となる点です。
今までは暗号資産は購入したっきりひたすら数年間寝かしておいただけでしたが、今回、NFTを試しに購入したタイミングで、円ベースでは実現利益がゼロでも暗号資産の売却価額(NFT購入価格)ー売却原価(過去に暗号資産を購入した時の価格)が課税所得となり、初めて雑所得として課税対象となりました。この税金を支払うために一部の暗号資産を売却して円で出金することに。
また、もう1つ留意すべき点として、現在の課税ルールでは暗号資産は株式等の従来型の運用手段に認められている軽い税率(申告分離課税の20%)の対象外です。
したがって、給与所得をベースに、暗号資産による雑所得も合算された上での課税所得に対して累進課税の所得税がかかるため、株式等の申告分離課税率(20%)に比較してかなり高い税率がかかってしまうのが現状です。
近い将来、暗号資産の投資が一般化して申告分離課税の対象になることに期待しています。
まとめ
暗号資産もそうですが、特にNFTはまだ始まったばかりの分野であり、先行きが不透明な要素も多くあります。その分、面白い分野とも言えるでしょう。
僕としては純粋な投資目的というよりは新しい世界が急速に広がっていくのを中に入って一緒に楽しむのが良いと思っています。
もちろん短期で売買を繰り返して利益を出すことも可能でしょうが、投資対象となると相当な作品の目利き力とタイミングが要求されることでしょう。
株式投資が20数年ほったらかしのように僕には短期運用は向いていないので、参加しながら成長するマーケットやコミュニティを楽しみたいと思います。