UCLA Anderson School of Managementの後輩が開催したオンラインイベントに参加しました。
彼はMBA留学後に戦略コンサル等を経て10年ほど前に独立して自分の事業を経営しており、1年ほど前に奥様と子供2人を連れてLAに移住。「大橋巨泉モデル」と彼が名付けた、季節ごとに住む場所を変えるライフスタイルの実現に向けて着実に近づきつつあるようです。
LAに移住後にゼロから新たに立ち上げた事業は順調に成長して今は月1万ドル程度になり、これに加えて日本で継続している事業もあるとのこと。
今回のイベントは彼がLAでゼロから立ち上げた事業を題材にして、個人が事業を立ち上げるためのステップやコツをシェアしてくれるというもので、有料でも開催できるレベルの気づきの多い2時間でした。
個人が事業を立ち上げるためのステップ
ネタバレにならない範囲で、彼がシェアしてくれたポイントをメモ。
- 戦略策定のプロセス
- 目的・目標を決める
- 現状分析
- 戦略の方針の策定
- アクションプランの策定
- 実行とPDCA
- 市場の選択
- 事業戦略の要諦
- 誰に、どんな価値を、どう提供するか
- ビジネスモデル
- パーソナルDX
- Zoomが起こした革命
- サービスのネーミングとブランディング
- 集客はどうするか?
- デジタルツールとサービス
- 事業を始めるために必要なマインドセット
これだけを眺めると、マーケティングを少しでも勉強した人なら「当たり前じゃん」と感じることでしょう。
でも、こうした1つ1つの基本的なことについて自分の頭で考えて仮説を立て、まず小さくトライしてみて、結果を踏まえて微修正・リトライのサイクルをぐるぐると回すことが肝心です。彼はこの基本に従って彼ならではのユニークな分析・発想で戦略を策定・実行した結果、今の事業状況に至ったわけであり、その軌跡をセミナーでシェアしてくれました。
これが企業内での新規事業立ち上げや、投資家を募っての起業となると、人のお金と期待を背負うため、プレッシャーが大きく「ダメならピボットすればいいや」なんて気楽に構えていられませんが、副業から始める程度であればPCやスマホを活用することで初期投資を抑えて個人でもトライ&エラーを繰り返すことができる時代になりました。
彼は10年前から試行錯誤しながら今日の事業状況まで辿り着いた訳ですが、コロナ禍で普通の人々がZoomを当たり前に使いこなせる状況が広がりつつある今では、今までサラリーマンしかしたことがなかった個人でもオンラインを活用することで初めての起業のハードルはぐっと下がったと感じます。
2時間のオンラインセミナーを通じて色々と考えたり、感じたことがありました。中でも僕にとって特に有益だった気づきは、人生の目的と目標について考えることの大切さです。
人生の目的とは?
新しく自分で事業を立ち上げようと思ったとき、上述したようなマーケティングの基本戦略をはじめとして、様々なことを考えて試行錯誤を繰り返すことになりますが、その前にそもそも「何のために事業を立ち上げるのか?」、もっと突き詰めると「自分の人生の目的とは?」という根源的な問いかけに対する自分なりの答えを持っていることが成功の秘訣というか、不可欠になります。
例えば、会社で出世したり、事業で大成功したりできたとしても幸せになれない人はたくさんいます。なぜか?
それは、自分の人生の目的、言い換えれば自分にとっての幸せの定義ができていないからです。
では、どうしたら自分の人生の目的、自分にとっての幸せを定義できるか?
それは、どんな状態の時に自分は幸せを感じるか?、自分にとって大切な譲れない価値観は?といった素朴な疑問に対して素直な気持ちで自分自身と向き合うことで見えてきます。こればっかりは誰かが与えてくれるものではなく、一人ひとりが異なる「自分にとっての幸せ」を自分の頭で考える必要があります。
p.86 幸福というものは人生における客観的な出来事で決まるのではなく、出来事をどのように解釈するかという主観的な心の働きによって決まるもの。(中略)
ハーバードの人生を変える授業
悲しみやつらい感情に免疫がある人間はいません。しかし、どのような状況でもそこによい部分を見つけられる人たちがいます。彼らは他の人の成功を自分のことのように喜ぶことができますし、挫折をチャンスに変えるコツを知っています。(中略)
最高の出来事が起こるのではありません。起こった出来事を最高のものにできる人がいるのです。
逆にどんな時に自分は嫌な気持ちになるか?当たり前だと思っているけれど実は自分にとって不要なものは何か?知らずのうちに自分の可能性や未来を縛っているものはないか?固執しているけれど手放した方が良いものはないか?
こうした問いへの回答を実際に紙とペンを手にして書き出してみることで自分でも意識していなかった本当の自分の気持ちに気づくことが幸せな人生に欠かせない第一歩です。
そして、人生の伴侶がいるのであれば、それぞれがこのワークをやった上で互いに見せ合いながら相手の考えに思いを寄せることが大切。
今回のイベントで彼が冒頭にこの話をしてくれたおかげで、改めて自分の人生の目的を振り返る良い機会になりました。
ちなみに、僕の場合は実はMBA留学を起点として折に触れて自分なりにこうしたことについてずっと考えてきました。そのきっかけは、留学中にたまたまクラスメートから転送されてきたメールに書かれたこんなストーリーを目にしたこと。
メキシコの田舎町。海岸に小さなボートが停泊していた。メキシコ人の漁師が小さな網に魚をとってきた。
その魚はなんとも生きがいい。それを見たアメリカ人旅行者は、「すばらしい魚だね。どれくらいの時間、漁をしていたの」 と尋ねた。
すると漁師は「そんなに長い時間じゃないよ」と答えた。旅行者が「もっと漁をしていたら、もっと魚が獲れたんだろうね。惜しいなあ」と言うと、漁師は、自分と自分の家族が食べるにはこれで十分だと言った。
「それじゃあ、あまった時間でいったい何をするの」と旅行者が聞くと、漁師は、「日が高くなるまでゆっくり寝て、それから漁に出る。戻ってきたら子どもと遊んで、女房とシエスタして。 夜になったら友達と一杯やって、ギターを弾いて、歌をうたって…ああ、これでもう一日終わりだね」すると旅行者はまじめな顔で漁師に向かってこう言った。
「ハーバード・ビジネス・スクールでMBAを取得した人間として、きみにアドバイスしよう。いいかい、きみは毎日、もっと長い時間、漁をするべきだ。 それであまった魚は売る。
お金が貯まったら大きな漁船を買う。そうすると漁獲高は上がり、儲けも増える。
その儲けで漁船を2隻、3隻と増やしていくんだ。やがて大漁船団ができるまでね。
そうしたら仲介人に魚を売るのはやめだ。自前の水産品加工工場を建てて、そこに魚を入れる。
その頃にはきみはこのちっぽけな村を出てメキシコシティに引っ越し、ロサンゼルス、ニューヨークへと進出していくだろう。
きみはマンハッタンのオフィスビルから企業の指揮をとるんだ」
漁師は尋ねた。
「そうなるまでにどれくらいかかるのかね」
「15年から20年くらいかな」
「それからどうなるの」
「それから?そのときは本当にすごいことになるよ」と旅行者はにんまりと笑い、
「今度はIPOして持ち株を売却して、きみは億万長者になるのさ」
「それで?」
「そうしたら引退して、海岸近くの小さな村に住んで、日が高くなるまでゆっくり寝て、 日中は釣りをしたり、子どもと遊んだり、奥さんとシエスタして過ごして、夜になったら友達と一杯やって、ギターを弾いて、歌をうたって過ごすんだ。 どうだい。すばらしいだろう」
今でも時々このストーリーを思い出して、自分の人生の目的について思いを巡らせます。
人生の目標とは?
次に彼が触れたトピックは、人生の目標について。
人生の目的が「到達したい究極のゴールの姿」だとすると、人生の目標とはそこに行き着くまでのステップやプロセスの定義と言えます。
人生の目的とか究極のゴールとか言うと何か遠い存在で実現性が感じにくかったり、抽象的すぎて具体的なイメージが持ちづらかったりすることがあります。
そんな時、何事もそうですが、短期的で到達の可能性が見える目標を設定することで人はモチベーションが湧いてきます。
- 目的と目標を決め、実現に必要なステップを考え、一歩ずつ進めば必ず達成に近づける
- 仮に目標を達成できなくても今よりはずっと良い場所に到達する
- 目標設定はタダ。どんなに高い夢や目標を設定しても、誰も損しないし、誰にも迷惑はかからない
どれも当たり前に聞こえますが、幸せな人生を手に入れるために大切な真理とも言えるでしょう。
人生に棚ぼたはありません。「こうありたい」という明確な目標をまず掲げること、そして現状を正しく把握して理想とのギャップを理解し、目標に向けて一歩を踏み出すことが重要です。
ここまで書いていて、昔にも同じようなことを書いたなあと思い出しました。今から17年前、まだUCLAにMBA留学中の時に書いたエントリを発掘。
事業を立ち上げるためのセミナーに参加しましたが、彼の話を聞きながらマーケティングや事業戦略よりもまず大切なことについて考え直すきっかけになりました。
ここをしっかりと見つめ直すところから始めて、何か新しい事業の可能性についても少しずつ考えていきたいと思います。
追記:彼がセミナーで「影響を受けた本」として紹介していた本を読んでみたら色々と気づきの多い本でした。