プロフィールいま思うこと

映画「灰色の雲」主演から30年

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プロフィール
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東京都立戸山高校の文化祭である「第44回 戸山祭」で3年H組が制作した映画「灰色の雲」が上映されたのは1989年の9月23日。

今からちょうど30年前、当時の日本はまさにバブル景気の絶頂期で浮足立っていた中で、高校3年生だった僕たちが作った映画は、軍隊のクーデターにより軍国主義に逆戻りした近未来の日本で苦悩する高校生を描いた作品でした。

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主役に選ばれ、製作総指揮もやることに

当初、僕は助監督に立候補し、またクラス投票の結果で主役を務めることになりました。

その後、夏休み前に慶應義塾大学法学部の指定校推薦が決まったため、既に受講を申し込んでいた河合塾の夏期講習を全てキャンセルして高3の夏を映画製作に捧げることを決意。

結果的に製作総指揮と音楽(エレキギター)も担当し、自宅で何シーンか撮影も行われることに。

受験勉強の傍らで高3の夏休みにクラス全体で取り組んで制作したこの映画は、読売新聞が主催する高校生映画フェスティバルにも出品されて大島渚監督からコメントを頂き、最終選考まで残りました。

先日、卒業以来初めての平成2年卒の同窓会が開催されて久しぶりに当時の仲間達と顔を合わせる機会に恵まれて、忘れかけていたこの映画のパンフレット等が発掘されました。

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予告編

戸山祭の当日の呼び込み用に制作した映画の予告編。

映画内でキャストが着用している軍服は本格的ですが、実は自衛隊の本物の制服です。他にも、撮影機材の調達や編集スタジオの確保、撮影場所の交渉等において48人のクラスメートが様々な場面で活躍して完成に漕ぎ着けました。

今でこそスマホで簡単に綺麗な動画が撮影できますが、30年前はビデオカメラは高価で大型でした。1988年にソニーが発売したばかりの、当時の最先端だったSONYのHi8(ハイエイト)規格のビデオカメラを何とか伝手を辿って入手し、この映画は撮影されました。

Hi8のマスターテープをS-VHSにダビングしたコピーを発掘し、更にMiniDVテープにコピーしておいたものを見つけてDVDにダビング。そして、DVDからPCで再生可能なファイルに変換することでYouTubeで蘇りました。

Hi8 > S-VHS > MiniDV > DVD > wmv > YouTubeという、まさに映像フォーマットの変遷の歴史にしぶとく対応しながら保存・継承され、30年間生き延びた映像がデジタル化されたものです。

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映画ポスター、パンフレット

戸山祭の公式パンフレットには、1947年から開催との記載があります。戦後間もない時代から受け継がれてきた歴史の重みを感じます。

戸山祭公式パンフレット
灰色の雲の紹介。これだけ読んでも何だかさっぱり分からない…

戸山高校が凄いのは、戸山祭では高校1年は展示、2年は演劇、3年は映画製作という不文律の伝統があり、ほぼ全クラスが毎年これに沿って活動するところ。

1989年も多くの葛藤を経て全10クラス(1クラス48人前後!)がそれぞれ思い思いのテーマで映画を制作しました。

当時、クラスで美術が得意な仲間が制作したポスターやパンフレットも発掘されました。

戸山祭運営委員会の審査済みポスター
来場者全員に配布された23ページに亘る力作

何と映画内で流れる音楽はエンディングとBGM1曲を除いて全てクラスの仲間が作詞、作曲、演奏したオリジナル。エンディングで流れるStill love herはTM Networkの名曲をコピーしたもの。

歌やピアノからキーボード、ドラム、ベース、ギター、サックスに至るまで、クラスメートの隠れた才能を目の当たりにして感動したのを覚えています。

映画のために作られた楽曲の数々
スタッフ一覧
キャスト一覧
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ストーリー

 2008年 軍隊は、クーデターを起こして政権を握る。その背景には、日本の経済的衰退と、文化の頽廃があった。「秩序」をとり戻した、と軍隊は称賛され、軍国主義体制は固まる。が、その裏では、自由主義者や社会主義者の弾圧が行われていた。

 3年後……2011年 隠れた自由主義者の家族を持つ一人の少女、名は佐倉美沙。彼女は、自由主義者としての誇りを持っている。自由な雰囲気の失われた高校では、明るい存在であった。「校則」の網を堂々と破り、いつも教師に叱られているが、その純粋な心には人を引きつけてやまない美しさがあった。

 しかし、とある教師との口論がもとで、彼女やその家族が自由主義者であることが分かってしまう。その情報は、秘密警察に伝わり、彼女の一家は皆殺しにされ、彼女は「洗脳」のために連行される。そこで、幸か不幸か、彼女は、J.S.P.(Junior Secret Policemen)となって出世した彼女の恋人、佐原礼と出会う。礼は、現実主義者なので、理想主義的な美沙には冷たかった。しかし、彼の心は美沙と再会してから動揺していた。彼も美沙の純粋さに引かれていたのであった。

 そんな時、彼は美沙が処刑される事を聞いて、一つの決意をする。
「苦しみのない歓喜と調和の世界に飛翔しよう」と。

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上映に際して

製作総指揮 金平靖博、竹倉憲也

 「出世の道エリートコースをただひたすら進み続けることだけが人間の正しい生き方だろうか?」という問題にこの映画の主人公、佐原礼は悩まされます。

 「大学受験」を控えた私たちも約3ヶ月前、「戸山祭参加」をめぐってこの礼と似たような問題に直面しました。その時には、「慣例どおりに映画制作」または「映画以外の時間のかからない形で」とか「戸山祭不参加」などと一人一人の主張はバラバラであり、クラスは崩壊寸前でした。

 しかしながら「映画制作」という形でクラスの方針がなんとか固まり、実際に撮影を開始したのが約2ヶ月前の7月中旬。機材・ロケ地・スタジオの確保、悪天候による予定変更など数々の難題を乗り越え「例年より遅れている」というプレッシャーに潰れることなく、今日の上映を迎えることができましたのは3ヶ月前の「分裂状態」から脱し、以前より堅くなったクラスの結束によるものではないかと思います。

 作品の仕上がりのほうも実に満足のいくものが出来たと思っております。ただの「自己満足」だと思われる方もいらっしゃるでしょうが、どうか最後まで御覧下さい。

 最後になりましたがこの映画制作に際し父兄の方々を始め、様々な面で御協力下さった方々に感謝いたします。

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本編NG集

予告編と合わせて製作された本編NG集。当時の生き生きとした撮影現場の雰囲気が伝わってくる懐かしい映像です。

この戸山祭の伝統は今後もずっと引き継がれていくといいなぁ。

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