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ライフ・イズ・ベジタブル

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「売れない・買えない・お金ない」という三重苦の創業期を乗り越えて、国内最大規模の食品販売サイト「オイシックス」をゼロから立ち上げた高島宏平さんによる「ライフ・イズ・ベジタブル」。

神奈川県屈指の進学校である聖光学院中学・高校で学んだ日々、東京大学大学院での仲間との起業、修行に明け暮れたマッキンゼー時代を経て、再び信頼できる仲間で集まって起業、インターネットで野菜を売るというアイディアを実現させるものの、次から次へと降りかかる難題の数々。

地に足の着いた、リアルな起業ストーリーです。同時に、仕事に向かうスタンスについても学びの多い一冊です。

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与えられた環境の中でどう振舞うか?

たまに職場の愚痴ばかり言っている人がいます。上司がバカでわかっていない、権限がないからできない、つまらない仕事が多い等々。そんな人を見ると、「じゃあ起業すれば?」と言いたい(起業したことないですが、この本を読めばゼロから会社を立ち上げることの大変さの一端を垣間見ることができます)。

自営業に比べたらサラリーマンなんてリスク取ってない分だけ自分の思い通りにならないことだってあるでしょう(そして、きっと起業したら実はもっと思い通りにならないことの連続なんだと思う)。別に「石の上にも3年、辛いことも我慢しろ」と言いたい訳でもなくて、これからの時代のサラリーマン人生、というか今までもそうだったと思いますが、大切なことは「自立すること」。換言すれば「自分の頭で考え、行動する」こと。

もちろん各人が持っているスキルの差異はありますが、そんなものよりも実はずっと大切なこと、長い目で見て大きな差を生むものが、働くことに対する心構え、姿勢、スタンスです。仮に2人の同期が同じ職場で同じ仕事を与えられても、その後の成長や成果はその人の仕事に対する心構え次第で大きく変わってくることでしょう。一言で集約するならば、「自分の人生、他責にしたら負け」ということに尽きると思っています。

以下のフレーズを読んで「職場でそんなマッチョなことできない」、「そんなリスクは取れない」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、実は「上司から言われるがままに与えられた仕事を頑張る」ことがサラリーマンにとって最大のリスクだと思います。会社に守ってもらう、会社に尽くす、そんなメンタリティこそが危険。この本では、そんな観点からも共感できるフレーズが幾つか登場してきたので、少しご紹介します。

チャレンジしないリスク

p.94 何かにチャレンジしようと思ったとき、チャレンジすることのリスクは見えやすいが、気づいたらチャレンジしないままなんとなく終わってしまったというリスクは普段なかなか感じることが難しい。でも、一度きりの大切な人生。長い目で見ると、チャレンジするリスクよりも、いつまでもチャレンジしないリスクの方が実は大きいリスクだ。

この感覚はとっても大事。誰でも新しいことに挑戦するのは怖いし、できれば何となくやり過ごしたくなるもの。でも、そんな選択を続けていくうちに、常に無難な選択肢をオートマチックに選んでしまう思考回路が無意識のうちに組みあがっていきます。これが実は一番のリスク。

挑戦しなければ失敗も少ないけれど、学びも少ない。挑戦しなければ無難だけど、面白くない。人と同じような無難な選択を無意識に積み上げていくうちに、自分ならではの色が次第に失われていき、自分の人生を生きている実感も薄れていくことでしょう。そうなる前に、一歩を踏み出す勇気、“Pushing yourself out of comfort zone”精神があれば、きっと自分でも想像もしていなかった新しい道が見えてくるはず。

チャンスは自分で作るもの

p.88 「うちの会社は若手にオポチュニティを与えてくれない」と愚痴を言う人は少なくない。知人にも「入社5年経っているのに責任ある仕事を任せてもらえない」と嘆いている大手企業の若手社員がいる。しかし、オポチュニティは、能力と気概を持って自分からとりにいけばいいのではないだろうか。自らが本気で粘り強く周囲に働きかければ、掴み取れることは案外たくさんあるのではないかと思うのだ。

もしかすると、「言ってはいけない」という思い込みが自分の可能性を狭めているのではないか。会社の中で自ら主体的に取り組んでいけば、自分で思っている以上に、自分が変えられることは、大きいのではないか、そしてチャンスを作ることはできるのではないかと思うのである。

自分ができそうな仕事を上司から与えられるままに引き受けているようなスタンスでは仕事を器用に「こなす」能力ばかり身につくだけで、ほとんど成長していません。

もちろんやったことのない仕事は不安がありますが、まず自分の実力を見極めたうえで、時には20%くらい高めの目標、負荷がある仕事を見つけてあえて上司に頼んでやらせてもらってみること。仮に失敗しても首になることはないでしょうし、必ずそこから学べるものがあります。こうした日々のちょっとした積み重ねが筋トレのように中長期的には大きく効いてきます。

問題を解く態度を選ぶのは自分

p.182 仕事をしていると、こちらの都合とまったく関係なく問題が次々と降りかかってくる。特にチャレンジをしているとなおさらだ。問題を選ぶことはできないが、問題を解く態度は100パーセント自分たちで決めることができる。どうせなら楽しみながら問題を解いて明るい日々を送りたいし、きっとその方が上手に問題を解くことができると思う。

p.268 降りかかる問題や与えられる制約条件は選べないが、ポジティブな態度を選んで感謝するか、ネガティブな態度を選んで愚痴を言うかは、私たちの選択だ。自分を信じ、ポジティブな態度をとった方が成功できる可能性が高いのであれば、ポジティブな態度を選択した方がいい。そしてその方が、成功の確率が高いだけでなく、毎日が楽しく充実したものになる。

人からお金をもらっている以上、楽しいことばかりではありません。他人の起こしたトラブル対応に巻き込まれたとか、地味な単純作業とか、厳しい納期に向けた突貫工事とか、どんな職種であれ仕事をしていたら次から次へと色々な課題が湧いてきます。

目の前の仕事に対して逃げられないとき、やらされ感満載で文句言いながら仕方なくやるか、あるいは「これも何かの試練、転んでもたたでは起きないぞ」と思って少しでも楽しんでやろうとするのか、その態度は自分で決めることができます。

このちょっとした心の持ちようが仕事の内容に大きく影響します。他責にして、環境や上司や顧客のせいにするのは簡単ですが、現実的には自分の力でコントロールできるものなんてほとんどありません。一度きりしかない自分の人生、長いようであっという間です。

自分の人生のハンドルは自分で握る。少なくとも自分の心の持ちようだけは誰にもコントロールできない、させないという気概を持ってコトに当たるところから、自立のプロセスが始まります。

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より良い環境を自ら切り拓いていくためのヒント

たまたま今、自分に与えられている環境の中でどんなスタンスで臨むべきかについては上述のとおり幾つかの心構えを紹介しました。本書では、更に一歩踏み込んで、より良い環境を構築していくうえでのヒントについても触れられているように思います。

中でも僕がメモしたのが、夢中時間率、仲間、外に出る、という3つのキーワード。

夢中時間率

p.273 起きている時間のうち、夢中になっている時間の率、すなわち「夢中時間率」を最大にするような、そんな生き方を僕は意識している。(中略)

そもそも、成功することと夢中になること、究極の目的はどちらだろうか。(中略)

どちらを真のゴールと設定するかは人それぞれだと思うが、ほとんどの活動においては、「成功する」よりも前に「夢中になる」というアクションをとる必要がある。また、「成功する」に比べると「夢中になる」はすぐにできることだから、気分的に楽である。そのうえ、常にポジティブになれる。夢中になっているときは、うまくいくイメージをもちながら活動しているので、日々のプロセスは格段に楽しくなる。

夢中になることのパワーは計り知れません。仕事でも趣味でも些細なことでも、時間を忘れて没入している時、他人から見ると苦行のようなことでも本人にとっては大したことではありません。また、必ずしも楽しい時間=夢中でもありません。何に夢中になれるかは人それぞれ。まず自分はどんな時に夢中になれるのかを知って、少しでも自分が夢中になれるようなことを自分の仕事や生活に意識的に取り入れていくことができると人生は充実してきます。

夢中になっている間はそのプロセスそのものが楽しかったり大事なだけで、結果のことなど考えません。でも本人が充実感が得られるだけでなく、それだけ集中している分、ただ「やらされ感」でやっている人たちと比べると質・量ともに格段に上の仕事をしていますので、結果的に成功に結び付く確率も高まっているものです。

仲間

p.72 「上司と部下」と関係を超え、「雇用契約」という感覚をはるかに超えた、心から「同志」と思える仲間をどれだけ集められるかが、ベンチャー起業だけではなく、組織の成否を左右する最重要ポイントであると私は考えている。

仕事は一人ではできません。チームで仕事をするからこそ、自分だけではできないような大きな仕事、質の高い仕事ができるもの。チームに求められる要素は幾つかありますが、最も重要なことは志を共有できる仲間がどれだけいるかどうか。現実的には、普通の企業の場合は、それぞれ世代も役職も置かれているライフステージも違うなか、様々な異なるインセンティブを持った人たちがたまたま集められた組織でこうした仲間意識を育むことはとっても大変なことです。

だからこそ、何のために今、この仕事に取り組んでいるのか、という働く目的や意義、そして何を目指しているのかというビジョンやバリューといった目に見えないものを明文化してメンバーで共有することが非常に重要だと思います。

でも、実際の組織ではこうした、why?やwhat?という共通認識がないままに、目先のhow?、どうやってやるか?ばかりに目が行ってしまいがち。これでは仕事は単なる作業でしかなく、やらされ感が募っていい仕事は期待できません。

志を掲げて仲間の意識を同じ方向に向けて合わせていくこと。そして、志は同じだけれでも、チームの一人ひとりは様々なバックグランドを持つダイバーシティあるメンバーを揃えること。この2つのバランスを意識することがチームビルディングには欠かせない大切な要素です。

外に出る

p.234 外に出る、ということは、もちろん外部の情報やノウハウを取り込むという点でも非常に有効だが、それだけではなく、外部の視点で自分たちを見ることで、自分たちの強みや課題を再認識することができる、という効果も大きいと思う。

何も転職だけが外に出るという意味ではなく、企業内に留まっていても、意識的に担当するお客様の業界を変えたり、職種を変えたり、住む場所を変えたりということにより、今まで当たり前だと思っていたことが実は単なる自分の思いこみだったことに気づくことが多々あります。

また、最近ではソーシャルメディアの普及に伴なって、同じような問題意識を持った社外の人たちに出会うためのコストがぐんと下がり、その気になれば企業の枠を超えて様々な人たちと出会うチャンスが大きく広がってきています。

サラリーマンとして給料をもらっている以上、職場で与えられたミッションをこなすのは当たり前として、あえて本業以外にもう1つ自分の興味の軸を持って企業の枠を超えて交流してみることで自分の世界はぐっと広がります。

何の利害関係もない職場以外のコミュニティだからこそ、もっと自分らしさを出すことができるでしょう。こうして職場から外に出て、自分が夢中になれるテーマを探して深掘りして、仲間との縁を育てていくことは巡り巡って色々な形で自分の本業にも必ず良い影響を与えると思います。

単なるOisixの起業ストーリーとして読んでも面白いですが、働くことに対する重要なヒントが随所に散りばめられている素敵な本です。

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