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知性を磨く「スーパージェネラリスト」の時代

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読書メモ
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読むほどに膝ポンが連発する本を久しぶりに読みました。2008年に東京国際フォーラムで開催された第10回ナレッジマネジメントフォーラムで講演したご縁で知り合った田坂広志さんの新著『知性を磨く「スーパージェネラリスト」の時代』。

読んだ本のうち、その時の自分にとって心に響くフレーズがあると、必ずメモを取るようにしています。メモを取るほどでもないままに最後まで読了する本が多い中、この本は何か所もメモする羽目に。

後々に自分が振り返って想いを新たにしたり、自分の成長を確認するために、そのメモをブログにして公開するケースは稀ですが、この本はあえてブログのエントリを書きたくなるほど、今の自分に響きました。

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割り切りと腹決めの違い

次々と決断を迫られる日々。どこかで決めないと、周りに迷惑がかかる。しかし、判断に十分な情報もない。こんなとき、これ以上いろいろと悩んでも仕方ないから、もう決めるしかない、という状況に追い込まれることがあります。

ここで重要なのは、エイヤっと割り切って決めてしまうのか、うーんと悩んだ末に腹を決めるのか。一見、外からは同じように見えますが、当の本人にとっての重みは全く違います。忙しさにかまけて、割り切りを重ねていないか?決断の際には、都度、肝に銘じたい問いかけです。

p.28 我々の精神は、その容量を超えるほど難しい問題を突き付けられると、その問題を考え続けることの精神的負担に耐えかね、「割り切り」を行いたくなる。問題を単純化し、二分法的に考え、心が楽になる選択肢を選び、その選択を正当化する理屈を見つけ出す。

p.31 (「腹決め」とは)「これで行くしかないか・・・」と、腹も定まらず、受動的に意思決定するのではなく、「これで行こう!」と、腹を定め、能動的に意思決定することである。

p.33 前者の「割り切り」の心の姿勢は、心が楽になっている。しかし、後者の「腹決め」の心の姿勢は、心が楽になっていない。

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その「ビジョン」には将来に対する洞察があるか?

p.123 「ビジョン」とは、「これから何が起こるのか」についての「客観的思考」である。(中略)すなわち、「ビジョン」とは、未来に対する「客観的思考」であり、「主観的願望」や「意志的目標」ではない。(中略)もし、我々が、企業や市場や社会の「問題」を解決したいと思い、そうした「問題」を生み出す企業や市場や社会の「仕組み」を変革したいと思うならば、まず、何よりも、企業や市場や社会が、「これからどのような方向に変化しようとしているのか」を洞察する必要があるからである。

世の中に「ビジョン」という言葉が溢れていますが、「○○分野での世界のリーディングカンパニーを目指す」というのは単なる主観的願望、「201x年に売上高xx億円を目指す」というのは単なる意志的目標、「地域社会の発展に貢献する」というのは経営理念。

こうなっていたらいいな、という自分の願望をただ述べるのではなく、客観的な事実を集めて、分析して、そこから導出される未来の姿をどう描くか。

もちろん、未来のことなど誰にもわからないけれど、少なくとも単に願うだけではなく、集めたファクトをベースにして「きっと世の中はこういう方向に向かっているのでは」という自分なりの洞察を持つことが大事。

そして、ビジョンを掲げたら、あとはそれを実現するために自ら行動する。「自分の選択を正解にしていくという決意」、「行動によって、自ら正解を構築していくのが人生」という気概で仕事をしたいものです。

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「戦術」で大切なこと

戦略を立てるまではよいとして、その戦略に沿って具体的にどうやって活動するのか。この段階になると、とことん「固有名詞」にこだわって活動計画を立てることが重要になります。そして、もっと大切なことは、予め立てた戦術に沿って活動した後の振り返り。

往々にして、「やりっぱなし」になりがちですが、実際に活動してみて、当初の仮説がどこまで正しかったのかをきちんと反省して、作戦を練り直すことを徹底したい。

時には「棚ボタ」もあるかもしれませんが、顧客ニーズや競争条件といった周辺環境が激しく変化している中で中長期的に結果を出し続けるためには、このサイクルをこまめに愚直に繰り返すことでのみ、少しずつ成功に近づいて行けるのだと思います。

p.152 
想像力:具体的な「固有名詞」を想定し、可能な限り「背景情報」と「周辺情報」を入手したうえで、その戦術を実行したときのシミュレーションを徹底的に行い、戦術の最善策を検討する。
反省力:一つの戦術を実行した後は、その経験を仔細に振り返り、徹底的な「追体験」を行い、戦術の改善策、もしくは新たな戦術を検討する。

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「エゴ」と向き合う

p.170 「エゴ」という存在は、しばしば、我々の心の苦しみを生み出す元凶となり、他者に害を与える原因となる厄介な存在でもある。(中略)処し方は、ただ一つである。ただ、静かに見つめる。(中略)それを否定しようとせず、抑圧しようとせず、ただ、静かに見つめる。(中略)それを行うだけで、不思議なほど「エゴ」の動きは静まっていく。

p.172 心の中の「エゴ」というものは、その動きを「美しい建前」や「正当な論理」によって「擬態」し、自身の動きを隠す傾向がある。

p.173 我々が「相手の心」の動きを見誤るのは、ほとんの場合、自分の心の中の「エゴ」が「自分に都合のよい解釈」や「自分に心地良い解釈」をするからである。

人は、つい自分にとって都合の良い解釈をしてしまいがち。不都合な真実にもきちんと目を向けて相対して、受け入れて、やるべきことを考えること。エゴを処するには、戦おうとするのではなく、静かに向き合うこと。

これは、東京裁判で文官としてただ一人絞首刑となった広田弘毅が座右の銘としていた「物来順応」という考え方にも通ずるものだと思います。

では、どうすれば「ただ静かにエゴを見つめる」ことができるのか。それには、マインドフルネスでも広く紹介されている「瞑想」が良いと思います。まずは、最も簡単な「呼吸に集中して気づく」ことから習慣にしていきたいものです。

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何歳になっても成長できる

ただ与えられた仕事をこなしているだけの日々になっていないか?それは楽ですが、過去の貯金を食いつぶして生きているようなもの。「苦しい時が上り坂」と言いますが、筋力トレーニングと同様に、適度な負荷を意図的にかけることを怠ると、現状維持はおろか衰退するだけです。

p.48 人間の能力というものは、100の能力を持った人間が、90の能力で仕事に取り組んでいると、その仕事を、たとえ1000時間行ったとしても、確実に力は衰えていく。
 もし、100の能力を持った人間が、自身の能力を高めていきたいと思うならば、110や120の能力が求められる仕事に集中して取り組む時間を、たとえ「毎週数時間」でよいから持たなければならない。逆に、その「毎週数時間」を持ち続けるならば、確実に能力は高まっていく。

自分の専門領域に対して誇りを持って究めていくことは大事ですが、自分に対してレッテルを貼るのは簡単。自分の限界は、自分で決めるもの。専門外のことに対しては無知で良いと割り切ったら、そこでおしまいです。

p.193 「私は、技術屋ですから」という言葉は、「私は技術屋ですから、技術については、それなりの見識を持っています」という肯定的な意味を持った言葉であるが、問題は、その「表層意識」が語る言葉の裏に、次の「深層意識」が生まれてくることである。
「私は技術屋なので、契約などについては、よく分かりません・・・」

長いようで短いのが人生。僕も気づいたら、このブログを書き始めてもう10年、あっという間に勤続20年です。短い人生で、出会うことができる人の数はごくごく僅か。そんな中で、何かのご縁で今までに出会った人たちとはきっと何かの理由があるのだと感じます。

p.208 職場を見渡し、「垂直統合の知性」を持った、師匠を見つけること。そして、私淑すること。心の中で、「この人が私の師匠だ」と思い定め、その人物から貪欲に学ぼうとする。
ときに、その師匠は、「出入りの業者」と呼ばれる人々の中に、いるかもしれない。そうした、しなやかな心の姿勢を持つとき、「私淑すべき師匠」は、どこにでもいることに気がつく。
いずれ、我々の人生は、「人との出会い」によって、決まる。しかし、その「出会い」は、ただ偶然に与えられるものではない。
「成長を求める心」
「出会い」とは、不思議なほどに、その心が引き寄せる「縁」。

筑波大学名誉教授の村上和雄さんは「人生には、こちらが求めていると、それに関連したことに出会うという何か不思議な暗号めいたものがあります」と言っていますが、僕も出会いは偶然ではなく、作り出すもの、引き寄せるものだと考えています。

誰しも、一度は、「何かに夢中になって必死だった時に、思いがけず誰かが横からふっと手を差し伸べてくれることで一気に状況が好転、もしくは前進するような感覚」を感じたことがあるのではないでしょうか。

なかなか思い通りに事が進まないことは多々ありますが、「必死にもがいていれば、きっとそんな出会いが待っている」と心のどこかで信じることができたら、少しだけ気が楽になるのでは。

一日で読み切れるほどの分量ですが、今の自分の甘い心を見透かされたようなガツンとした衝撃と、読後にじわじわくる味わい深さを併せ持ったこの本、お勧めです。

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