社内SNSの草分けNexti、13年の歴史に幕

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ソーシャルメディア

僕がUCLAのMBA留学から帰ってきた直後、2005年の秋に構想し、経営に提案して、2006年4月にゼロから立ち上げた社内SNS、Nexti(ネクスティ)。

Nextiのオープン当時はfacebookがまだ一部の米国の大学生・高校生の間で限定的に使われていた時代。SNSという言葉は世間ではほとんど認知されておらず、経営会議でプレゼンした際も「SNSとは?」から説明が必要でした。

その後、日経新聞で取り上げられたことをきっかけに各種メディアでも広く取り上げられることとなり、社内SNSの世界では草分け的な存在として認知されたNextiですが、諸般の事情から2019年3月末をもって残念ながらクローズすることになりました。

社内SNSについては今まで本ブログでも何度となく取り上げて検証してきたので今さら改めて語ることはほとんどありませんが、13年の幕を閉じるに当たり、今だから明かせる裏話も含めて最後に振り返っておきます。

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着想から経営の巻き込みまで

ベースとなった着想

社内SNSですが、実は着想自体は1997年4月に遡ります。今でもNTTデータの社内システムで最も使われているインフラの1つである電子電話帳システム。社員の指名等から個人を特定すると、その人の所属や役職、電話番号、メールアドレス、勤務ビル等が表示されるシンプルなWebサービスです。

ここに顔写真を貼ったり、趣味や出身地等の「人となり」がわかるような情報を追加することで、顔と名前が一致したり、初めての人でも何か共通点を見つけて親しくなるきっかけになるのでは。入社3年目の時、そんな提案を思いつき、当時の社内提案制度に応募していったん採用の結論を得ましたが結局実現しないままでした。

そんな中、MBA留学から帰国後に立候補して参画した社風改革プロジェクトでその想いを改めてメンバーにぶつけたところ賛同を得て企画が始まったのでした。

具体化の契機

このアイディアが社内SNSという具体的な仕組みに繋がったのは職場でたまたま目にした小さな新聞記事でした。

この記事がきっかけで社内SNSのトップランナーとなる当時は無名のスタートアップ企業と出会い、一気にプロジェクトは具体化していきます。

経営陣の巻き込み

公式には新・行動改革WGという経営企画部が主導するプロジェクトの枠組みで企画を進めていましたが、個人的にはロビー活動も。

当時は課長代理でしたが、MBA留学の報告会というイベントがあり、副社長を始め、経営企画部長、人事部長といった経営のキーパーソンに直接プレゼンするという絶好の機会に恵まれました。

ここぞ!とばかりに、ずっと感じていた社内風土や社内コミュニケーションに関する問題意識と社内SNSという打ち手について熱弁し、手応えを感じました。

経営会議でのプレゼン

そして、経営企画部長が旗振りをするWGの最終プレゼンにおいて、僕らのチーム(リスペクターズ)は全チームの中で最高得点を得て、何と経営会議で社長含む全ての経営陣に直接提案する機会を得ます。

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Nextiオープン

こうして1月末に経営から正式にオーソライズされた社内SNSプロジェクトは、もともと4月にオープンさせると決めた目標に向かって、更に社内イントラネットで仲間を募って一気に加速。

何だかんだと様々な想定外の出来事に日々対応しながら、仲間の知恵と力を最大限に合わせることで2ヶ月あまりで本当にオープンまで漕ぎ着けることができました。

いま思えば、アジャイル開発的、デザイン思考的なスタイルで完遂できたプロジェクトでした。本業を抱えながら、ボランティアベースで仲間とゼロから新しいサービスを作り上げた経験は僕にとって大きな成功体験になり、その後の本業にも計り知れない前向きな影響を得ることができました。

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オープンしてからの反響

社内の反響

こうして、全社から集った仲間たち「リスペクターズ」と共に立ち上げたNextiは当初の不安をよそに想定外のスピードで一気に全社へ広がっていきました。

映画「ソーシャル・ネットワーク」で、公開したばかりのfacebookでユーザーが秒刻みで増えていく様子をザッカーバーグらが確認するシーンがありましたが、まさにあんな感じ。

F5キーでブラウザを更新する度にユーザー数がリアルタイムでグングンと増加する様子を目の当たりにした時は、想像を遥かに上回る反響に嬉しい気持ちと少し怖い気持ちが半分半分でゾクゾクしたのを覚えています。

開設した翌年には何と社長表彰まで頂き、運営メンバーにとって大きな励みになりました。

メディアの反響

日経新聞に掲載された記事をきっかけに社外からも先進的な取り組み事例として数々の取材や講演の依頼を受けました。

記録があるだけでも、160件を超える講演、取材、企業等との意見交換を実施し、本活動で交換した名刺は700枚くらい。どんなに忙しくても社内外からの依頼には必ず対応しようと心に決めて、今まで1件たりとも断ったことがないのが誇りです。

NHKおはよう日本の特集、NHKのラジオ生出演、新聞、雑誌、書籍でのインタビュー記事の掲載、各種イベントでの講演等、貴重な経験ができました。

また、2009年にはNextiが第26回IT賞(ITマネジメント革新賞)を受賞するという栄誉を頂くことができました。

テレビ

NHKのおはよう日本を始め、BS1「経済最前線」、スカパー「ビジネスブレイクスルー」、BS11「賢者の選択」といった番組で特集頂きました。

特に、毎朝みている「おはよう日本」に出演できたのは嬉しかったです。ビデオを撮り損ねたのが残念…

ラジオ

NHKラジオ「私も一言!夕方ニュース」という番組の時事問題を扱う「ニュースここ一番」のコーナーで、「”ソーシャルネットワーク”で私たちの暮らしはどう変わるか?」と題した特集にニュースの当事者・専門家として登場しました。

ラジオの生放送に遠隔地から電話で参加というスタイルでしたが、なるほどこうやって繋がるんだ!と新たな発見でドキドキ楽しい時間でした。

新聞

日経新聞がマスコミでは一番始めに取り上げてくれたのを契機に、毎日、朝日、産経、読売と全国紙全てで取材記事を掲載して頂きました。

雑誌

SPA!のような柔らかいものから週刊ダイヤモンドのような堅いものまで、様々なジャンルの雑誌で特集して頂きました。

中でも印象に残ったのはプレジデント。日経朝刊の大きな広告に自分の顔写真が掲載されていてまずビックリ、そして通勤電車の吊り広告にも同じ写真があって更にビックリ。こんな経験はもうないだろうなぁ。

  • 一般誌:SPA!、DIME、CIRCUS
  • 経済誌:プレジデント、週刊ダイヤモンド、Forbes、週刊東洋経済
  • 専門誌:月刊ソリューションIT、日経コミュニケーション、日経ソリューションビジネス、月刊テレコミュニケーションズ、広報会議、人材教育、金融情報システム
  • ウェブ:マイコミジャーナル、ダイヤモンドオンライン、日経ビジネスオンライン、日経ITPro ほか

書籍

Nexti運営メンバー(リスペクターズ)で「NTTデータ流 ソーシャルテクノロジー」という本まで出版できました。

他にも様々な書籍でNextiについて取り上げて頂きました。

  • 「進化する企業のしくみ」(PHPビジネス新書)
  • 「企業変革のマネジメント」(東洋経済)
  • 「あなたの中の「変える」チカラ」(ダイヤモンド社)
  • 「貢献力の経営」(ダイヤモンド社)
  • 「チームの生産性をあげる。」(ダイヤモンド社)

ほか多数。

講演等のイベント登壇

イベント登壇は数知れず。主要なものをメモ。

  • enNetforum特別セミナー(代々木)「第5回SNS, blog, RSS, Wiki等を活用した業務改革研究会」
  • NET&COM 2007(東京ビッグサイト)
  • 日経デジタルコア(秋葉原UDX)「社内SNSの真価」
  • 日経BP社(ベルサール神田)「企業内ブログ/SNS活用術」
  • HRD JAPAN 2008(パシフィコ横浜)
  • ナレッジマネジメントフォーラム2008(東京国際フォーラム)
  • ITpro EXPO(東京ビッグサイト)「SNSによる社内コミュニケーション変革」
  • 日本ナレッジ・マネジメント学会(渋谷ヒカリエ)「NTTデータ社内SNS『Nexti』10周年記念セミナー 社内SNSのこれまでと”未来” ~人の知と機械の知の共創~」
  • 東北大学大学院、長岡技術科学大学 ほか

中でも印象深いのが、日本ナレッジ・マネジメント学会の基調講演としてお話した「NTTデータ社内SNS『Nexti』10周年記念セミナー 」。

生まれて初めて「お花」を会場に飾って頂きましたが、これは社内SNSを使ってくれている社員やグループ会社の方々が有志を募り贈って頂いたとのこと。10年の節目でとても思い出深いイベントとなりました。

表彰

2006年には社内SNS(Nexti)が第26回IT賞(ITマネジメント革新賞)を受賞しました。

取り組み当初はまさかこんな賞を頂くような活動にまで発展するとは夢にも思っていませんでしたが、一緒にコツコツ活動してきた仲間と日々活用してくれている社員・役員の皆で作り上げてきた仕組み、社風が社外からも評価頂けた結果だと思います。

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社内SNSの効果

EGMサミット2012にパネラーとして登壇した際にお話したことのメモから論点を抜粋。ここでは、EGM(Employee Generated Media)とは社内SNSと読み替えて頂いて構いません。それまで様々な場所で考察し、お伝えしてきたエッセンスが整理されています。

  1. 社内に存在するさまざまな壁とEGM
  2. 社内の壁の存在に気づかせてくれるEGM
  3. いつの間にか壁を気にしないで発想・行動できるようにしてくれるEGM
  4. EGMのゴール設定
  5. EGMの効果
    1. 自分の想いを自由に表明できる
    2. 自分に共感してくれる同僚に出会う
    3. 新たな気づきを得て成長する
    4. 同僚の助けになる
    5. 周りを巻き込む

また、Nextiユーザー全員に対して質問できる場を作りましたが、ここはfacebookのような友人に閉じた場よりも広く様々な意見を募る場としても有用です。

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今だから語れる秘話

Nextiを立ち上げてから13年が経過し、クローズする今だから語れるエピソードも幾つかあります。気が向いた時に、本エントリーを更新予定。

経営会議を決定づけた社長の一言

Nexti立ち上げ前後における2チャンネルのスレッド変化

数々の炎上案件

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社内SNSがうまくいくためのヒント

立ち上げのスタイル

まずは、立ち上げ時のスタイルについて、従来型のプロジェクトとの違いに着目し、以下の3点から考察しました。

  1. 経営がコミットしたWG活動であったこと
  2. オープンソース的なプロジェクトチーム活動であったこと
  3. 楽観的な素人集団であったこと

このエントリーはちょうど梅田さんの「ウェブ進化論」がベストセラーになっていたこともあって広くバズり、梅田さんご本人からもコメント頂く等、大きな反響がありました。

革新的な運営スタイル

いわゆる従来型の社内システムとは一線を画した運営スタイルも大きな挑戦でした。

  1. 社内システム部門ではなく、ボランティアベースの有志WGによる企画・運営
  2. 紹介制&自己申告制

始めのうちは理解が得られずに苦労したことも多かったですが、結果的にうまく立ち上がる成功要因になりました。

社員による社員のための機能追加

Nextiでは利用者である社員が自分の欲しい機能を自分で作って持ち込むことで進化していった歴史があります。

これもNextiが10年以上に亘って使われ続けた理由の1つでしょう。

社長の全面的なバックアップ

山下社長

大企業と言えどもサラリーマンの集合体。社員も役員も社長のことをよく見ています。

Nextiを企画した契機になった改革WGを副社長として旗振りし、その後に社長に就任してからも一貫して経営トップ自らNextiのヘビーユーザーとして社内外に広報して下さったのが山下さんでした。

「社内SNSは文明ではなく文化だ」という名言を残したのも山下さん。

「働き方改革」がブームの昨今ですが、山下さんは10年前から時代の先を見通していました。

Nextiが10周年を迎えた時は外部講演等で頂いた謝礼を活用してリスペクターズでお祝いしましたが、この時も忙しい中で山下さんにご参加して頂き、印象的なスピーチをしてメンバーを労って下さいました。

山下さんが社長でなければ、Nextiはここまで長い間、使われることはなかったでしょう。稀有な経営者に見出だされ、育んで頂いたNextiは幸運でした。

岩本社長

同時に、山下さんがいなくなったら終わってしまうような活動では僕らが実現したかった社風改革は道半ばで終わってしまうという危機感を常に抱いていました。

社長の任期を越えて受け継がれるもの、それが社風(会社の文化)といわれるものでしょう。Nextiが生み出すオープンな社風をさらに大きく育てることが大切だと考えています。

山下社長「社内SNSは文明ではなく文化だ」

そこで、山下さんの後任として岩本さんが新社長に就任するという人事が発表された直後に岩本さんにメール差し上げて、リスペクターズの活動について直接対面で説明させて欲しい旨をお願いしました。

新社長就任後はお客様への挨拶回りを始め、超多忙なのは知っており、実際に本業の方でも秘書経由で岩本さんの時間調整をお願いしていましたが優先順位調整待ちでなかなか時間を確保できずにいた頃の話です。

そんな中で、岩本さんはすぐに快諾のお返事を下さり、秘書に指示してまだ本業の方でも調整中だった貴重な時間を割いて話を聞いて頂くことができました。

正直、どこまで我々の活動についてご存知かもわからなかったのですが、極めて的確に僕らの問題意識と打ち手、活動の課題感について理解されていて驚きました。

「山下さんほどはなかなか書き込みできないと思うけど、皆さんの活動の意義は理解しているし応援しているよ」とおっしゃって頂き、僕らも大船に乗った気持ちで安心して活動を継続できました。

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13年の歴史に幕を閉じる経緯

一言でまとめるならば、上述した「社内SNSがうまくいくためのヒント」で記載した内容が時間の経過とともにキープできなくなっていった、ということだと感じています。

中でも、Nextiを特徴づけるポイントであり、生命線とも言える「ボランティアベースの有志WGによる企画・運営」と「社長の全面的なバックアップ」の2点が揺らいでいったのが決定的な要因と言えるでしょう。

この点についても秘話と併せて時間のできたタイミングで追記したいと思っています。

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終わりに

2019/3/29の18時頃をもってNextiは約13年の歴史にピリオドを打ちます。Nexti最終日の前夜にこれを書いている時点では、まだ僕の中ではNextiが終わることをリアルに実感できていないのが正直なところ。

Nextiは3つのステークホルダーに支えられています。まず、使ってくれているユーザー。続いて、陰ながら存在を承認して支えてくれている経営者。そして、ともにNextiを運営しているリスペクターズの仲間。

この日が来るまでには様々な葛藤がありましたが、いま、心にある感情は、今まで13年間を一緒に過ごしてNextiを支えてきて頂いた、ユーザー、経営者、リスペクターズの皆さんへの感謝の気持ちだけです。改めて、どうもありがとうございました。

大企業において、こんな稀有なコミュニティが13年間に亘って社内に存在し続けられたことは、NTTデータという会社の懐の深さと社員の成熟度の高さの現れであることは間違いありません。

Nextiという場は終わりますが、 こうした「仲間の智恵と力を合わせる」風通しの良い社風はNTTデータグループならではのユニークな文化、DNAとして生き続けることを心から祈念しつつ、次の若い世代の中から、必ずや新しい形のNextiが立ち上がってくることを確信しています。

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