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運気を磨く

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読書メモ
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田坂広志さんの「運気を磨く」を読みました。

そもそも運とは何か?幸運を引き寄せる、なんてことができるのか?タイトルからして怪しげな雰囲気が漂います。

p.26 もとより、細やかに論じれば、これら以外にも「運気」の表れ方は色々な形があるが、本書においては、この「直観」「予感」「好機」「シンクロニシティ」「コンステレーション」などの形で現れる「運気」を中心として論じていこう。

ただし、この本が単なる迷信本と決定的に異なるのは、科学的なバックグランドを持ち、社会的にも影響力がある人が書いた本であるという点。

1951年生まれ。’74年東京大学卒業。’81年同大学院修了。工学博士(原子力工学)。
’87年米国シンクタンク・バテル記念研究所客員研究員。
’90年日本総合研究所の設立に参画。取締役等を歴任。
2000年多摩大学大学院の教授に就任。同年シンクタンク・ソフィアバンクを設立。代表に就任。
’05年米国ジャパン・ソサエティより、日米イノベーターに選ばれる。
’08年世界経済フォーラム(ダボス会議)のGlobal Agenda Councilのメンバーに就任。
’10年世界賢人会議ブダペスト・クラブの日本代表に就任。
’11年東日本大震災に伴い内閣官房参与に就任。
’13年全国から5200名の経営者やリーダーが集まり「21世紀の変革リーダー」への成長をめざす場「田坂塾」を開塾。

Amazonより

こんな知的な人が運気について真面目に論じている本はなかなか見たことがありません。

しかも、内容は「ゼロ・ポイント・フィールド仮説」と呼ばれる仮説をベースに解説されており、今までの科学の常識からすると相当に逸脱した考え方であるものの、見方を変えると「運気」にまつわる様々な事象を極めて明快に説明しうるものとなっています。

p.75 本書においては、誤解を恐れず、敢えて、現代科学の最先端で議論されている一つの「仮説」を述べよう。

ただし、以下に述べることは、一見、我々の日常的な常識を超えた理論と思われるかもしれないが、それは、決して怪しげな理論ではなく、原子力工学の博士過程で学んだ筆者の知見から見ても、一つの科学的仮説として検討に値するものである。

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非科学的と言われながら、誰もが信じているもの

東京大学で原子力工学の博士号を取得した著者が「運気」といった漠然とした対象について科学的に論じるためには相当な勇気が必要だったと思います。

p.73 あなたは、これまでの人生において、こうした体験、自分の未来を「予感」したり、「予見」したような体験はないだろうか。

筆者は、折に触れ、内々の会話として、色々な知人に、こうした体験の有無を聞いているが、予想以上に、こうした「予感」や「予見」の体験を持った人は多い。

ただし、それらの知人は、こうした体験を語ることが、周囲の誤解を受けることを懸念し、あまり積極的に口に出しては言わないことも、一面の事実である。

筆者もまた、そうした誤解を受けることを懸念する人間であり、本書で、こうした体験を語ることに、正直に言えば、ためらいはある。

しかし、本書で語られる田坂さんの様々な実体験を読んでいると、確かに単なる偶然という言葉だけでは片付けられない、人智を超えた働きがあったとしか思えない出来事が淡々と綴られています。

p.19 筆者は、大学の工学部で長く研究者の道を歩み、科学的教育を受けた人間である。それゆえ、基本的には唯物論的な世界観によって研究に取り組んできた人間である。

従って、筆者は、何かの宗教団体に属したり、オカルト的なものを信じている人間でもない。(中略)

ただ、一方で、筆者は、これまでの68年の人生において、「運気」と呼ばざるを得ない出来事を数多く体験しており、それゆえ、この「運気」と呼ばれるものの存在を決して否定できないと感じている。

例えば、人生における重要な決断の瞬間に、天啓のように直観が閃き、それが正しい決断に繋がった体験や、なぜか、ふしぎな感覚に包まれ、その予感に従って行動したときに大事故を避けることができた体験、極めて重要な仕事の場面で、最も欲しい情報が、全くの偶然によって与えられた体験、ある会合で、たまたま隣の席に座った人との縁から、創造もしなかった社会的役割が与えられた体験など、枚挙に暇がない。

振り返ると、僕も進学や就職、結婚といった、人生の節目となる大きな決断では、色々と論理的に考え尽くした末に、最後は直観に従って選択してきました。

また、このブログでも何度か書いたことがありますが、MBA受験の難関であるGMATという試験において致命的な時間配分ミスを犯した際に、最後の10分間でまさに天から答えが降りてきたような感覚で正答に導かれた経験があります。

その時のスコアが助けになって、かけがえのないMBA留学という2年間を過ごすことができ、自分のキャリアや働き方、人生観の大きな転機となりました。

p.248 我々の心の奥深くには、実は、我々自身の想像を超えた「強さ」が眠っている。(中略)

人間というものは、ぎりぎりまで追い詰められたとき、不思議なほど、腹が据わることも事実である。そして、腹が据わったとき、やはり不思議なほど、「叡智」が降りてくる、「勇気」が湧き上がってくることも事実である。

あの時は自分の実力というよりも、何か大きな計らいでMBA留学というチャンスを与えてもらった、という感覚でした。

きっと今後の人生で、まだ僕が気づいていない、もっと大きな役割があり、そのための準備として今までのこうしたユニークな経験が生きる日が来るのだと感じています。

p.244 「志」と「使命感」を抱いて歩む人物は、その人生において、いかなる苦労や困難が与えられても、それを、「大いなる何かが自分を育てようとしている。この逆境を与えることによって、自分を成長させようとしている。そして、その成長した自分を通じて、素晴らしい何かを成し遂げさせようとしている」と解釈できるがゆえに、その想念は、「究極のポジティブな想念」となっていく。

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なぜ、最先端の科学の知見と、最古の宗教の直観が一致するのか

本書で田坂さんが紹介しているゼロ・ポイント・フィールド仮説は以下の3点に集約されます。

p.88 「量子真空」を前提とした、この「ゼロ・ポイント・フィールド仮説」とは、次の三つを柱とする仮説である。

第一 この宇宙のすべての場所には、「ゼロ・ポイント・フィールド」と呼ばれるエネルギー場が遍在している。

第二 そして、この「ゼロ・ポイント・フィールド」には、我々の生きるこの宇宙の過去、現在、未来のすべての情報が記録されている。

第三 従って、我々の心が、この「ゼロ・ポイント・フィールド」に何らかの形で繋がったとき、我々は、過去、現在の出来事はもとより、未来に起こる出来事をも、予感、予見することができる。

これだけ読んでもさっぱりな内容ですが、本書を読むと、現代科学の最先端の理論が示しているものがキリスト教や仏教が伝える世界観とも合致していることに驚きます。

例えば、量子真空がゆらぎを起こしてビッグバンが発生した直後に宇宙は光子(フォトン)で満たされたという理論と仏教の経典「般若心経」で語られている「色即是空」やキリスト教の「旧約聖書」の一節「神は「光あれ」と言われた」という内容の一致。

また、世界賢人会議ブダペストクラブの創設者であるアーヴィン・ラズロ博士が提唱する、宇宙の過去、現在、未来のすべての情報を記録する「アカシック・フィールド」の考え方と、仏教の唯識思想で語られている「阿頼耶識あらやしき」の類似性などが触れられています。

p.95 この「最先端の科学の知見」と「最古の宗教の直観」との一致は、単なる偶然なのであろうか。

しかし、もし、この「般若心経」を著した仏教の僧侶や、「旧約聖書」を著したキリスト教の聖職者が、「祈り」や「祈祷」を通じて「ゼロ・ポイント・フィールド」に繋がったのであれば、この宇宙が誕生した瞬間の記憶を、「宗教的な直観」として把握したとしても、決しておかしくはない。

p.90 もし、「量子真空」の中に存在する、この「ゼロ・ポイント・フィールド」の性質が科学的に明らかにされ、「時間と空間を超えた情報伝達」が起こることが説明できるならば、これまで科学が説明できなかったがゆえに、「偶然」や「錯覚」、「誤解」や「幻想」、「思い込み」や「迷信」などとされてきた、次のような現象についても、合理的な説明が可能になる。

「以心伝心」「テレパシー」「透視」「遠隔透視」

「予知」「予言」「デジャヴ」「未来の記憶」

「枕元に立つ」「夢枕に立つ」「霊的交信」「背後霊」

「前世の記憶」「生まれ変わり」(中略)

この「ゼロ・ポイント・フィールド仮説」は、そうした不思議な現象や体験が生まれてくる理由を、それなりに科学的な基盤の上に説明しようとするものであるため、「ブラックボックス的思考」、すなわち、実体の分からない概念を無条件に受け入れ、思考停止に陥ってしまうという落とし穴を避けることができるのである。

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なぜ、天才は、アイデアが「降りてくる」と感じるのか

この仮説をベースにすると、「我々が発揮する直観力や想像力、発想力や創造力といったものは、実は、我々の「脳」が生み出すものではなく、「ゼロ・ポイント・フィールド」から与えられるもの」であり、天才と呼ばれる人たちは何か特別な才能を生まれ持った人たちではなく、こうした領域へのアクセス方法を会得できた人たちと考えることができると説きます。

p.98 これまで世に現れた多くの「天才」と呼ばれる人々は、研究や学問、芸術や音楽など、分野を問わず、職業を問わず、そのアイデアや発想がどこから生まれてくるのかを問われたとき、誰もが、例外なくと言って良いほど、「どこかから降りてきた」「天啓のごとく与えられた」といった表現をする。「頭で考え抜いて、思いついた」といった表現をする人は、あまりいない。

そうであるならば、我々一般の人間と、「天才」と呼ばれる人間の違いとは、生まれつきの脳の構造の違いでも、遺伝子的なDNAの違いでも、先天的な能力の違いでもなく、「ゼロ・ポイント・フィールド」と呼ばれるものと繋がる能力の違いであり、その能力は、「心の世界を変える技法」を習得することによって、後天的に身に付けられるものであるとも言える。

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運気を磨く、心を磨く

p.272 我々の心の奥深くには、「個人的無意識」の世界を超え、「集合的無意識」の世界を超え、「ゼロ・ポイント・フィールド」と繋がる「超時空的無意識」の世界がある。

その世界の存在は、まだ、現代科学は明らかにしていないが、もし、この「超時空的無意識」の世界があるならば、その世界こそが、人類数千年の歴史の中で、多くの人々が「神」と呼び、「仏」と呼び、「天」と呼んできたもの。

そして、その世界こそが、「真我」と呼ぶべき、我々の本当の姿。

我々の人生を、不思議な形で導いているのは、実は、我々自身に他ならない。

そのことを思うとき、かつて、インドの思想家、クリシュナムルティが語った言葉が、深く、心に響いてくる。

あなたは、世界であり、世界は、あなたである。

このブログを書いていてふと思い出しましたが、実は僕が田坂さんを知って著書を読み始めるきっかけになったのは、2008年に日経新聞が主催したナレッジマネジメントフォーラムというイベントでご一緒したご縁でした。

東京国際フォーラムの数百人の聴講者を前に、田坂さんが基調講演を行った際に、僕も続いて登壇して社内SNSについて講演しました。

当時は田坂さんがどれほど凄い人なのかも存じ上げずに、控室で名刺交換をして雑談しましたが、いま思えばこの出会いも何か運命的なものを感じます。

◆ナレッジマネジメント フォーラム2008
人材力向上と情報資産の活用を目指して

主催:日本経済新聞社
協力:日本ナレッジ・マネジメント学会
会期:4月21日(月)
会場:東京国際フォーラム

【9:00-10:10】基調講演
「ウェブ2.0革命によるナレッジ・マネジメントの進化」
 多摩大学大学院教授/シンクタンク・ソフィアバンク代表
 田坂 広志 氏

【10:20-11:20】講演1
「抜本改革プロジェクトと情報伝達力強化に向けた情報発信改革」
 東京海上日動火災保険株式会社 執行役員抜本改革推進部長
 木村 亨 氏
 東京海上日動火災保険株式会社 IT企画部 企画室 デザイングループ課長
 川杉 朋弘 氏

【11:20-12:10】講演2
 「組織の壁を超えた全社ナレッジマネジメントの実現に向けて
 -社内SNSの活用事例のご紹介-」
 株式会社NTTデータ 郵政システム事業本部課長
 竹倉 憲也 氏

日本ナレッジ・マネジメント協会HPより

今まで田坂さんの本は何冊か読んできましたが、本書はその集大成とも言える内容で、読み応えのある1冊です。非常に簡易な文章で読みやすいので、今まで田坂さんの著書に触れたことがない方にもお勧めします。

また、本書の内容に興味を持った方には、ぜひこちらのYoutube動画もお薦めです。ゼロ・ポイント・フィールド仮説には触れられていませんが、本書で論じられているのと同じような世界観について様々な角度から語られていて、その内容の類似性に驚きます。

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