たまに健康関連本を手に取りますが、あえて生活に取り入れてみようと思うまでに至らないケースが多い中、たまたま手にした「なぜ、「これ」は健康にいいのか?(小林弘幸)」はわかりやすく、かつ合点のいく説明で説得力がありました。
この本の結論は、副題にあるとおり「副交感神経が人生の質を決める」というもの。
副交感神経とは
僕がそうだったように、副交感神経といわれてもピンとこない方が大半だと思います。副交感神経とは、呼吸や心臓の鼓動のように無意識で働いて生命維持を司っている自律神経の1つで、交感神経と副交感神経の2種類があります。
p.4 自律神経は内臓や血管の機能をコントロールする神経で、交感神経が体を支配すると体はアクティブな状態になり、副交感神経が支配すると体はリラックスした状態になります。私たち人間の体は、活動的な日中は交感神経が支配し、夜、リラックスするときには副交感神経が支配するというように、相反する働きを持った二つの自律神経が、交互に体を支配することで身体機能が保たれているのです。
これまでは、自律神経の働きについて、このように説明されるのが一般的でした。これも間違いではないのですが、この言い方だと、私たちの体は交感神経と副交感神経が、きれいにスイッチングすることで動かされているような印象を受けます。でも、実際はそうではありません。
体がもっともよい状態で機能するのは、実は、交感神経も副交感神経も両方高いレベルで活動している状態のときだったのです。もちろん、両方高レベルといっても、アクティブな状態では「交感神経がやや優位」、リラックスした状態では「副交感神経がやや優位」、というような、バランスのシーソー状態が生じています。でも、それはあくまでも「やや優位」なのであって、どちらか一方に大きく偏ってはいけないものだったのです。
以降、なぜ交感神経と副交感神経の両方が高い状態が望ましいのかについて、「女性が男性よりも長生きするのはなぜだろう?」、「季節の変わり目に風邪をひく人が増えるのはなぜ?」、「石川遼はなぜタイガー・ウッズの歩き方に注目したのか?」、「キム・ヨナの金メダルの理由は副交感神経の働きにある」といった具合に、興味深い事象の背景にある理由として自律神経の働きが人間に与える影響の大きさについて解説されています。
もちろん、自律神経だけで語れるものではないのですが、今まであまり意識したことのなかった交感神経、副交感神経という自律神経が人間の生活の根本に関わっているということ、これらを意識的に高める工夫を生活に取り入れることで生活の質が上げられるという著者の主張には共感できました。
人間は日中時間帯は自然と交感神経が優位になるとして、ではどうしたら副交感神経のレベルも同時に高めることができるのか?ということが次に知りたくなります。
本書では色々な視点から日常に取り入れる工夫が紹介されていますが、僕が注目したのは、「心に余裕を持って行動すること」と「コップ一杯の水を効果的に飲むこと」です。
心に余裕を持って行動すること
p.102 心に余裕があれば副交感神経が高まるので、たとえ予期しないアクシデントが起きたとしても、正しい判断にもとづく最善の対応策をとることができます。(中略)
そのためにも、私自身、外出する場合、つねに30分の余裕を持った行動を心がけています。何事もなく30分早く目的地についたら、その時間を利用してお茶を飲んだり、仕事の資料を見直したりと、その時間を有効活用すればよいのです。(中略)
たった30分、時間に余裕を持って行動するだけで、その日一日すべてがうまくいきます。いつも時間に追われているような行動をしていると、交感神経が上がった状態のまま、副交感神経が下がりっぱなしとなり、それが精神的健康のみならず、身体的健康さえも害していくのですから、決してあなどれません。
よく「5分前行動」なんて言われますが、仕事をしているとギリギリまでドタバタしながら次の打ち合わせに向かうようなことがよくあります。約束の時間に遅刻するのはもってのほかとして、常に時間に追われるような仕事の仕方というのはトータルでみると効率が悪いというのは感覚的にわかります。
「急がば回れ」とはよく言ったもので、まさに本書のテーマはそれとも言えますが、意識的に時間の余裕を作ることで心の余裕を持つことが心身の健康に非常に重要だということを再認識しました。
コップ一杯の水を効果的に飲むこと
p.131 自律神経をコントロールする重要なポイントの一つが、腸内環境をよくし、その働きを安定させることにある(中略)そのために有効なのが、「朝一番のコップ一杯の水」と「食前のコップ一杯の水」、そして乳酸菌をとること
本書では副交感神経の働きの1つである腸の活動について大きく取り上げています。具体的には、コップ一杯の水を効果的に飲むことで上手に副交感神経を刺激し、腸内環境を整え、結果として全身の健康向上に大きく寄与すると主張します。
p.123 朝は、日内変動によって、副交感神経優位から交感神経優位に切り替わる時間帯です。ということは、副交感神経が低下しやすい時間だともいえます。そうした時間帯に適度に副交感神経を刺激することで、副交感神経の下がり過ぎを防ぎ、自律神経のバランスを整えることができるのです。
p.126 腸内環境が悪いと体はすべてが悪くなる負のスパイラルに陥り、反対に腸内環境がよくなると全身の調子がよくなる正のスパイラルが回りはじめるということです。
詳細は本書を読んで頂ければ良いのですが、僕なりにこんな風に理解しました。
朝起きてすぐのコップ一杯の水
→胃結腸反射の誘導(胃腸の蠕動運動を促す反応)
→副交感神経の刺激
→自然な便意
→腸内環境の改善
→腸の消化吸収能力の向上
→腸の血流の向上
→栄養分を含んだ血液量の向上
→栄養分が血流に乗って腸から肝臓、心臓へ
→全身の約60兆個の細胞に栄養分が行き渡る
こんな具合で、なぜ「朝起きてすぐのコップ一杯の水」が健康に良いのかが説明されています。
これまで特に意識することのなかった自律神経というものに着目して、心身の健康に役立てようというアプローチは新鮮で説得力がありました。
さっそく今朝、起き抜けにコップ一杯の水を飲むことからスタート。今後の効果に期待しましょう。