定年後の働き方やセカンドキャリアをどう描くかは、多くのビジネスパーソンにとって避けて通れないテーマです。
同期の早期退職や異なる生き方に触れたとき、私たちは知らず知らずのうちに周囲と自分を比べ、焦りや迷いを感じてしまいます。
今回のセッションでは、外側の刺激によって揺れ動いていたクライアントが対話を通じて足元の自分の強みと本当に進みたい道筋を再発見していくプロセスが見られました。
同期の決断がもたらした心の揺らぎ
クライアントは冒頭、同期が60歳の節目で会社を辞めて新たな学び直しなど独自の道へ進んだ話題を口にしました。一方で、別の同僚が今の会社で利益を出し続けることこそが社会貢献だと語っていたことにも触れ、両極端な価値観の間で自分の立ち位置について少し戸惑っている様子が伝わってきました。
周囲がそれぞれの道を選択していく姿を目の当たりにすると、現状の自分は何も進んでいないのではないかという焦燥感が生まれがちです。
しかし、他人の選択はあくまでその人の価値観に基づくもの。僕自身は安易な同調やアドバイスを避けつつ、クライアントが感じている違和感や本音にじっくりと耳を傾けることから対話を深めていきました。
二者択一を手放してグラデーションの選択肢を見出す
クライアントの胸中には、会社に残るか完全に外へ飛び出すかという二者択一の思い込みが潜んでいるように感じました。社外に出て新しい世界を見たいという思いと、いきなり独立することへの不安がぶつかり合い、身動きが取れなくなっていた様子。
そこで、週4日勤務や嘱託契約といった制度面での柔軟な選択肢について問いかけを重ねました。
すると、いきなり環境を激変させるのではなく、徐々に仕事の重みを変えてグラデーションのように移行していくスタイルがクライアント自身にとって最も心理的負担が少なく、現実的であるという視点に自らたどり着きました。週に1日でも自分の裁量で使える時間が生まれれば、大切にしたい趣味や学びに充てることができ、心に大きなゆとりが生まれるということを再認識されました。
足元にある恵まれた環境を自らの武器に変える
対話が進むにつれ、クライアントは現在所属している組織で手がけている人材育成やキャリア開発支援の施策が実は非常に貴重な経験であることに気づき始めました。理解のある上司に恵まれ、全社規模の育成プロジェクトを主体的に推進できている現状は、客観的に見ても得がたい実績作りの場です。
外の世界に目を奪われていると、いま手元にあるリソースの価値を見落としてしまいがちです。今の場所で本気で取り組み、目に見える成果を積み上げること自体が将来社外へ活動の幅を広げる際に確かな武器や実績になるという構造をクライアント自身が納得感を持って捉え直すことができました。
定年までの残された期間は、単なる待機時間ではなく、未来の自分への投資期間へと意味付けが塗り替わったのです。
コーチの視点
セカンドキャリアを考える際、多くの人が隣の青い芝を見つめて、環境を一変させることばかりに意識を奪われてしまいます。しかし、本当の変革は外側の状況をいきなり変えることではなく、現在の環境に対する意味付けを変え、自らの意思で進みたい道を決めることから始まるもの。
今回のセッションで僕が意識したのは、クライアントが語る他人の物語からクライアント自身の本音と足元の現実へと焦点を戻すことでした。
正解を外に求めるのではなく、対話を通じて自分自身の内側にある価値観や、すでに手にしている強みに目を向けてもらう。その結果、クライアントは焦りを手放し、直近の目標と中長期の展望をしっかりと結びつけることができました。
クライアント自身が自らの力で現在地を肯定し、次の一歩を踏み出す瞬間をサポートできることはコーチングの醍醐味だと感じています。
今日のクライアントの気づきをベースに楽曲を制作しました。
(1番)
同期が辞めた 夏の終わりに
「もう十分だ」と 笑っていた
狭い世界に 閉じてないかと
問いかけられて 立ち止まる会社の中で 積んできたもの
それだって誰かの 役に立ってる
分かってるのに このもやもやは
消えないままで 胸の奥(サビ)
まだ決めなくていい 迷いの途中
広い世界も この場所も
両方抱えて 歩いていける
急がなくていい 自分のペースで(2番)
週に一日 増える自由が
知らなかった 景色を見せる
静かに育てた いくつかの時間
誰にも言わず 続けてきたもの誰かに言われて やることじゃない
自分で選んだ 小さな一歩(サビ)
まだ決めなくていい 迷いの途中
広い世界も この場所も
両方抱えて 歩いていける
急がなくていい 自分のペースで(ブリッジ)
残された一年 気合を入れて
今できることを 積み重ねよう
その先にどんな 道があっても
ここでの経験は 消えないから(ラストサビ)
まだ決めなくていい 迷いの途中
迷うことすら 財産だから
両方抱えて 歩いていける
急がなくていい 自分のペースで
自分のペースで 歩いていく

