マイコーチとの対話の中で、個人のクライアント向けにコーチングを提供するだけでなく、企業の経営者向けのエグゼクティブコーチングを行うことによる可能性について考える機会がありました。
企業では役員と言えども社長を見て仕事をしています。企業のトップのあり方によって、その会社の社風や価値基準、ひいては業績は良くも悪くも社長の大きな影響を受けます。
その企業の社長に対してコーチングを行い、社長本人もまだ気づいていない真のゴールを引き出して、それに向けて動き出すお手伝いができたら、その企業で働く多くの社員の意識や行動が変わり、組織のルールや価値基準も変化し、最終的には業績向上という結果で現れるはず。
そのセッションでは、僕が企業経営に携わってきた経験やMBAで学んだ知識を活かして、エグゼクティブコーチとしてこうしたダイナミックなプロセスに関わることができたら非常にやりがいもあって面白そうだなと感じました。
そんなある日、たまたまご縁があって後藤里奈さん(株式会社リクリエイト代表取締役)に出会い、「企業専属コーチとして働くとは?」というテーマの講座を受講したところ、思っていた以上に奥深い企業向けコーチングの世界を垣間見ることができました。
その気づきをメモしておきます。
組織を真の変革に導く企業コーチが体現すべき3つの必須要件
企業という複雑な組織体において、プロのコーチが長期にわたり価値を提供し続けるためには、表面的なテクニックを超えた3つの柱が必要だと後藤さんは説いています。
1. コーチングの本質を妥協なく伝えられるか?
プロとして活躍するための第一歩は、コーチングの定義を明確にし、それをクライアントに対して毅然と提示できること。
- 目標とゴールを峻別する:現状の延長線上でPDCAを回す「目標(現状の最適化)」と、今のままでは到達不可能な「現状の外側のゴール」を明確に使い分ける必要がある。
- パラダイムシフトの誘発:現状を大きく変えなくても達成できるものは本物のゴールとは言えない。今のライフスタイルや価値基準が根底から変わるような変化を促すのがコーチの役割。
経営者のありがちな要望に対するプロコーチの回答
経営者からは、しばしば次のような表面的な課題への対処を求められます。
- 経営者の要望:メンタルを病んでいる社員や、やる気のない社員をコーチングしてほしい
- 経営者の本音:管理コストがかかる社員を外部に丸投げして、自分の負担を減らしたい
これに対し、プロコーチはあるべき姿を提示しなければなりません。
プロコーチの回答: その社員に月額20万円かけるのも選択肢ですが、トップや役員クラスに同額を投資して圧倒的に大きな成果を狙うこともできます。組織を劇的に変えたいのであれば、後者の方が合理的ですが、どちらを選びますか?
このように、経営者の耳の痛いことを恐れず本質的な投資対効果を突きつけられるかどうかがプロの分水嶺となります。
2. 経営層を主戦場にできるか?
自信のないコーチほど、責任の軽い現場社員へのコーチングに逃げてしまいがちです。しかし、組織の成果を最大化するためにはトップ層へのアプローチが不可欠です。
- 組織は上流に従う:組織の硬直化は常に川上(経営層)から始まる。トップのブリーフシステム(信念体系)が変わらなければ、現場のスキルをどれだけ上げても業績には繋がらない。
- 共通の目的を発見し共有する:数値目標や経済合理性の追求だけではない、経営者が真に達成したい「ありたい姿(志)」を言語化し、共通の目的として社内に根付かせることで社員の行動が変わり、結果として業績が向上する。
3. 具体と抽象の両面から組織をサポートできるか?
個人の成長を支援するだけでなく、組織全体を情報空間として捉え、その質を書き換える視点が必要です。
- 抽象(ビジョン)と具体(行動)の橋渡し:高い抽象度で語る経営者と具体的な行動を担う社員の間には意識の乖離がよく発生する。
- 双方へのフィードバック:
- 社長には届かない社員の本音を客観化して経営者に伝える。
- 経営者の心の中の肯定的評価を言語化して、社員に伝わる形でフィードバックする。
- コレクティブエフィカシーの向上:「我々ならこの高いゴールを達成できる」という集団の自己評価を高め、10人の組織なら10人以上の力を出せる組織化を促す。
- 社長も会社のゴールや志を実現するための一人にすぎない。社長や上司の顔色をうかがうのではなく、ゴールや志に対してどうか?と社員が考える会社は風通しがよく魅力的な会社。
- 会社の利益誘導のためではなく、社員個人の自立と自己実現のためにコーチングを行う。
講師への質問
今まで企業内でのコーチングについて深く考えたことがありませんでしたが、本講座を通じて企業専属コーチに求められる姿勢やスキルについて色々と考える良い契機になりました。
中でも、コーチングの本質でもあるゴール設定と事業計画との違いについて講師に質問してみました。
質問:企業が掲げる事業計画やKPIのような数値は目標であり、ゴールではないと理解した。ゴールは数値目標ではなく、その会社が目指す姿、ありたい姿のようなものであり、事業計画のように未来からバックキャストしてPDCAを回して達成を目指すものではないと理解した。このとき、ゴールとは会社のミッションやビジョンとはどう違うのか?
回答:会社のミッションやビジョンはきれいな言葉で整理されているがお題目になってしまい社員ひとりひとりまで浸透していないことがよくある。社長の心の底から達成したい姿、志のようなものをコーチングで引き出して言語化したものがゴールである。
講義で印象的だったのが、もしコーチングによって社員が「この会社は自分の志を果たす場所ではない」と判断して辞めていくのであれば、それは止められないという言葉です。
だからこそ、経営者に対して「優秀な社員が一緒に志を達成したいと思うような志の高い魅力的な会社をともに創りましょう」と提案するのが企業専属コーチに求められる姿勢だと後藤さんは説いています。
企業専属コーチに思いを馳せて6つの楽曲、Reframe the Goalを制作してみました。繰り返し聞き返して腹に落とし込みます。
[Verse 1]
KPIの先に何がある?
数字の奥で 消えた意味
整えすぎたその言葉
本音だけが残されてた同じ場所で働いて
違う景色を見ている
気づいてたそのズレを
見ないふりしてただけ[Pre-Chorus]
埋まらない抽象度の差
誰も悪くはないけど
このままじゃ届かないと
どこかで分かってた[Chorus]
ゴールがすべてを変える
未来から今を照らして
「できるかどうか」じゃなくて
何を選ぶかでいい上手くやるためじゃない
志に向かうための一歩
Reframe the goal
静かに何かが動き出す[Verse 2]
伝わらなかった評価も
飲み込んでた違和感も
言葉にしたその瞬間
少し空気が変わった閉じたままの情報じゃ
分かり合えないままだった
つながり始めたときに
同じ方向を向けた[Bridge]
変えるのはスキルじゃない
見えている世界のほう
少し視点をずらすだけで
未来は近づく従わせるためじゃない
引き止めるためでもない
信じられる前提が
人を動かしていく[Chorus]
ゴールがすべてを変える
個人を越えて collectiveへ
「できる」という確信が
現実を連れてくる顔色じゃなく目的へ
ただそれだけでいい
Reframe the goal
組織は息を吹き返す[Outro]
肩書きは関係ない
誰もがその一人で
志の中に立って
未来を選んでいくReframe the goal

