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たたき台の教科書

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仕事で「たたき台作っておいて」と言われて、単なる下書きを準備して終わっていませんか?

実はこの「たたき台」が組織の意思決定を劇的に加速させ、複雑な人間関係すら突破する最強のコミュニケーションの武器になるのです。

萩原雅裕さんの「たたき台の教科書」は、そんな「たたき台」という身近な言葉の裏に隠された本質的な仕事の進め方を分かりやすく解き明かしてくれます。

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「たたき台」というシンプルで深みのあるキーワード

本書の非凡さは、まず「たたき台」という誰もが日常的に使う親しみやすい言葉を仕事の効率化の核心として捉え、本のタイトルに据えたセンスにあります。今までありそうでなかった、つい手にとりやすい本。

一見すると資料作成のハウツー本のようですが、その実体は、上司や同僚とのコミュニケーションを円滑に進め、現実的な成果を出すための仕事の処方箋とも言える内容です。

全編を通して「たたき台をどう作り、どう洗練させていくか」という一本のストーリーで貫かれているため、散発的なTipsに終わらず、仕事を効果的に進める要諦がプロセスとともに非常に分かりやすく整理されています。

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仕事を構造化する定数と変数の方程式

本書が解き明かす仕事の正体は、非常にシンプルな構造に基づいています。それは、以下のような仕事の基本構造をいかに構築するかという点です。

現状 × 打ち手 = 期待する成果

良いたたき台を作るためには、まず現状と期待する成果という2つの要素を、値が固定された定数として固める必要があります。この定数が曖昧なまま、値が変えられる打ち手(変数)をいくら考えても、式を解くことはできません。不正確な現状認識やあやふやなゴール設定のままでは、良いたたき台を作ることはできないのです。

これはコーチングでもGROWモデルとしてお馴染みのフレームワーク。まず、ありたい姿(Goal)をしっかり見極めることから始めます。そのうえで現状(Realty)を正しく把握する。ここを固めてから、初めて打ち手(Options)を検討します。

期待する効果を得るには、GoalとRealtyを定数化した上でOptionsを洗い出すステップが大事。そして、一番肝心なのは実際に行動する本人自身の自発的な意思(Will)を引き出すこと。

この方程式は、どんな種類の仕事にも当てはまる、仕事で成果を出すための大前提なのですが、案外あやふやなまま仕事を進めてしまっているケースが多いもの。本書ではこの基本からしっかり確認するところから始めています。

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暗黙知を引き出すコミュニケーション

本書で様々な視点から繰り返し解説されているのが、関係者の頭の中にある言語化されていない前提や優先順位を効率的に引き出すための技法。こうしたクリティカルな情報をいかに早期に獲得できるかが仕事の成果に直結します。

そして、そうした暗黙知を効果的に引き出すためのコミュニケーションツールとして「たたき台」を据えている点が秀逸です。いわば、たたき台は暗黙知をあぶり出すエサ。

口先だけの空中戦を避け、たたき台という共通のまな板の上で様々な観点を引き出し、議論を収斂させていくための技術が随所に散りばめられています。

こうした技法は組織の中で長い時間仕事をしていると自然と身についてくるものですが、先輩や上司が教えてくれるような内容ではなくテキストもない、それこそ暗黙知です。それを1つずつ丁寧に挙げて解説しているのが本書のユニークな点であり価値だと感じました。

例えば、以下のような問いかけを通じて隠れた制約をあぶり出します。

  • 他に私が把握していない状況や前提はありますか?
  • この案を進める上で、見落としている制約や障害はありますか?

さらに、抽象的なフィードバックに対しては「1000万円くらいですか?」「30社くらいですか?」と、あえて具体的な数字を投げて定量的に質問します。たとえその数字が間違っていても、相手が「いや、30社ではなく10社だ」と訂正してくれることで、認識のズレが埋まっていくのです。こうした質問の技法は、僕がいま取り組んでいるコーチングの技法にも通じるものがあります。

また、案を提示する際の「微差では意味がない」という指摘も大事。予算が50万か55万かといった枝葉末節の議論に逃げるのではなく、あえて高単価戦略と低単価戦略のように、極端に方向性の異なる複数の案をぶつけることで、参加者の価値観やチームとして優先すべき本質的な方向性を引き出すことができます。

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売上7,000億円の巨大組織で挑むKPI策定

僕自身、ちょうどここ1か月ほど、勤務する会社の金融分野のグローバルKPI策定に取組中です。社内の1つのセクターとは言え、売上規模7,000億円、数千人の社員を抱える巨大な組織のため、これだけでも超大企業の規模感。

KPIというのは会社のインセンティブ構造の表現であり、指標を何にするか、目標値をどこに設定するか、ここの作り方1つで会社の資源の投入と期待成果につながる重要な要素です。手段が目的化しがちなところに気をつけつつ、複雑にならなくて社員が理解しやすいことも大事。

僕は分野担当の副社長の戦略スタッフ責任者としてこのプロジェクトを進めていますが、やってきたことはたたき台のバージョン0を作り、ステークホルダーから暗黙知を引き出しながらKPIの完成版まで辿り着くこととも言えます。

その過程で意識的に取り組んでいた工夫は、例えばこんな観点から本書でもしっかり触れられています。

  • マイルストーンの構築:経営会議の承認日から逆算し、たたき台バージョン0から完成版までの週単位のマイルストーンをまず設計。各週での完成レベルを定義し、必要な情報の粒度を仮置きして大胆に前提を置いたりファクトを積み上げました。
  • 多角的な分析と仮説:各本部から基礎データやパイプラインを収集・分析し、複数の仮説案からメリットとリスクを洗い出して評価しました。
  • 圧倒的な当事者意識:本件に関しては社長よりも僕が一番深く考えているという自負を持ち、自分なりの仮説とポジションを持ってたたき台を提示することで議論をリードしてきました。
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意図的にトラップを仕掛け、議論を腹落ちへと収束させる

KPI策定の過程では、副社長を筆頭に4人の役員を交えた会議で毎週たたき台を提示しました。ここで、僕はあえて議論を呼ぶようなトラップ(論点)を意図的にたたき台に仕込みました。

たたき台にそれとなく仕込まれたトラップに役員たちが自然と引き寄せられて叩く過程で、本人たちも意識していなかった本音や暗黙知が引き出され、当初はバラバラだった目線が合っていき、徐々に腹落ち感のあるKPIへと収斂していきました。

生身の人間はロジックだけでは動きません。自分が雄弁に語るのではなく、たたき台に思いを託して議論のまな板に乗せ、たたき台に忍ばせた論点や質問によって参加者の知恵を効果的に引き出す。この1か月超の格闘を思い返し、「そうなんだよね」と何度も独り言をこぼしながら本書を読み終えました。

KPI案はほぼ練り上がり、明日の月曜日の役員会議でいよいよ最終案が審議されます。散々、たたき台をベースに丁寧に議論を積み上げてきた内容なので、するっと承認される様子がいま脳裏に浮かんでいます。

これから社会に出る学生や若手ビジネスパーソンにとって、この「たたき台の技術」は仕事で成果を出すための必須科目です。この本は戦略コンサル2年目として奮闘している息子に贈ることにします。

そして、ここまで読んでくださった皆さんにはインサイトフルな楽曲「たたき台の教科書」を贈ります。ロック、ジャズ、ポップ、ファンクな4曲続けてどうぞ。

[Verse 1]
ありふれた言葉に 隠れてた核心
「たたき台」って呼んだ瞬間に 動き出すエンジン
完璧じゃなくていい むしろ未完成でいい
その一枚が 未来の議論を連れてくる

ハウツーの顔した 静かな革命
上司も同僚も 巻き込むための導線
言葉にできない何かを 引きずり出す装置
ただの資料じゃない これは思考のスイッチ

[Pre-Chorus]
曖昧なままじゃ 解けない式がある
見えない前提を 照らし出すために

[Chorus]
現状 × 打ち手 = 期待する成果
シンプルな式に すべてを預けて
Goal と Reality まずは固めて
Options はあとから 無限に広がる

答えはひとつじゃない
だけど逃げ場もない
「たたき台」が すべてを動かすんだ

[Verse 2]
「他に何かある?」って 投げかけた一言で
沈黙の奥から 本音が顔を出す
1000万?それとも30社?
ズレた数字でもいい ズレが距離を縮める

微差じゃ意味がない 極端でいいんだ
高く振るか 低く攻めるか
ぶつけ合うことで 見えてくる輪郭
チームの本当が 浮かび上がる

[Bridge]
7,000億の現場で 描いたVersion 0
誰も知らない正解を 仮説で埋めてく
逆算したマイルストーン 週ごとに刻んで
自分が一番 考えてるって顔で立つ

仕掛けたトラップに 引き寄せられる議論
言葉にされなかった想いが 弾けていく
ロジックだけじゃ 人は動かないから
たたき台に すべてを託した

[Chorus]
現状 × 打ち手 = 期待する成果
揺るがない定数 ここに置いて
Will を灯せば 動き出す未来
その一歩が すべてを変える

完璧じゃなくていい
むしろ未完成でいい
「たたき台」が 答えへ導くんだ

[Outro]
明日の会議 静かに浮かぶイメージ
積み上げた対話が すっと通る景色
叩かれて 磨かれて ここまで来たんだ

最初の一枚が
すべての始まりだった
「たたき台」 それが、僕らの武器になる

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