ちょっと前まではヒット曲と言えばレーベルが巨額の宣伝費をかけてプロモーションしてTVの音楽番組に出演して広く知られてCDが売れて…というサイクルでしたが(『M 愛すべき人がいて』の世界観)、今やネットでの配信が主流になり、曲の作り方や広がり方、ビジネスモデルが一気に転換期にあるように感じます。
YOASOBI
僕が初めてYOASOBHIを知ったのは2020年5月頃。当時、世間一般ではまだ知られていませんでしたが、娘や息子はネットで知っていて「夜に駆ける」を口ずさんでいました。その後、あれよあれよとメジャーになっていき、CD未発売でまさかの紅白歌合戦出場。
活動当初はayaseもikuraも顔を見せず、楽曲だけがSNS上で拡散されていきました。曲づくりも従来のようなメジャーレーベルの資本をバックにプロ仕様のスタジオ機器や楽器で録音、ではなく、何と9年落ちのノートPC上の打ち込みメインで制作したそう。
代表曲『夜に駆ける』は9年落ちのノートパソコンによって、基本的に打ち込みで制作したと番組内で紹介されていた。エレキギターは使ったようだが、その演奏と録音は高田馬場のカラオケボックスで録音したらしい。
おとにっち
Ado
YoutubeでYOASOBI周辺を彷徨っていて出会ったのがAdoでした。初めて聴いた「うっせぇわ」の圧倒的な歌唱力が衝撃的で、プロフィールを調べてみると「2020/10のリリース時、17歳女子高生」以外の情報なし。
今日でYoutubeでの発表からちょうど3ヶ月ですが、すでに4,100万回超の再生数です。
「ちっちゃな頃から」とくれば「悪ガキ」世代ですが、今は「優等生」。
僕の好きなボイストレーナーオシラさんも絶賛です。
先週のMステに出演したという情報から本人のインタビューにたどり着きました。
- 自分がAdoであることは学校のクラスメイトには話しておらず、本当に親しい友人にだけ教えている
- 自分の部屋のクローゼットの中にパソコンやマイクをセットして1人で録音している
- CDをリリースしていない人たちが地上波に出てパフォーマンスする新しい時代が来た
- 作曲者とは対面せずにSNS上で歌ってくださいと依頼が来てネット上でデータを送って完成
学校では自分から話しかけるタイプではなく、もちろん自分がAdoであることも隠して、普通に生活しているとのこと。
yama
同じように、yamaにもたどり着きました。
顔見せなし、性別・年齢非公開で、あくまでの歌唱力だけで勝負。1st Digital Single「春を告げる」は公開9ヶ月でストリーミング再生は1億回超です。
僕の好きなボイストレーナーオシラさんも絶賛です。
もっとyamaさんの人となりを知りたいと思って探して辿り着いたのがこのインタビュー。
「春を告げる」作曲者のくじらさんはYoutubeでyamaさんを知ってファンになり、twitterで歌を依頼し、対面することもなく、お互いの才能をネット上で確認しただけで、この作品が生まれたそうです。
Adoの名曲「金木犀」もくじらさん作ですね。
- 正直たくさん再生回数が伸びていく過程はちょっと怖かった
- やっと人間として生きたい、頑張りたいなと心の底から思った
- (顔を見せずに活動する意図は)誰も知らなくていい。作品だけを純粋に聴いて欲しい。
- 以前は普通に働いて休みの日を全部使って自室の狭い空間でひとりで録音していた
- 自分が救いを求めて一生懸命頑張るこだわる部分から聴き手が少し元気になれるとか、この曲を聴いたら少しだけ頑張ろうとか、明日も頑張れる気持ちになってもらえる音楽をつくり続けたい
- (大学生の「自分をわかってくれていると心の支えになる」というインタビューを聴いて)ああ歌っていて良かった。孤独な空間でひとりで歌ったけど、それが本当に支えてなっていて、生の声を聴いたことはなかったけれど、本当に届いていたんだといま実感した
- 自分自身のことは未だに自信はないし好きにはまだなれていないけれど、もがくことをやめたくない
言葉を選びながら静かに話す雰囲気はAdoさんにも通じるものを感じました。
AdoさんやYamaさんのような才能は以前なら誰にも知られることなく埋もれていたことでしょう。いま、こうした才能がちゃんと誰かに見い出されて世の中の人々から共感を得て広がっていく、という流れはネットのポジティブな側面であり、素晴らしいことだと思います。
また、こうした新しい音楽の楽しみ方、聴かれ方は、今や国境も軽々と超え、そして時代をも超えて広がっています。忘れられた40年前の日本の名曲をインドネシアの女の子が見出して世界で広く聴かれる時代です。
巨大資本やメジャーレーベルのバックがない個人でもノートパソコンさえあれば「夜に駆ける」レベルの楽曲が作れる時代。そしてyoutubeを使うことで世界に自分の作品を問い、共感を得ることができれば個人でも収益も上げられる時代に。
今後、世界からいったいどんな才能が見い出され、世に出てくるのか、楽しみですね。