松原みきさんの1979年のデビュー曲、「真夜中のドア/stay with me」が今、世界中で大ヒットしているというニュースを知りました。
海外を中心に、Spotifyでは直近1年間で460万回、Apple Musicでは100万回以上再生された。特にインドネシアでは1ヶ月で3万回再生を記録したほか、タイ、マレーシアでも再生数が大きく伸びている。さらに、世界のApple Music J-POPランキングにおいて12ヶ国で1位を獲得、合計47ヶ国でTOP10入りを果たした。
Pony Canyon News
SpotifyのユーザーがSNSで曲をシェアした回数ランキングであるSpotifyグローバルバイラルチャートをチェックしてみると、Mayonaka no Doorが何と1位!
何でそんなことが起こるのだろう?と不思議に思って調べてみると、インドネシア人の人気Youtuberの存在とストリーミングによる音楽の聞き方の変化という背景がありました。
Rainychのカバーで着火
今回の世界的なヒットは、スマトラ島に住むインドネシア人Youtuber、レイニッチによるカバーが1つのきっかけになっているそう。彼女は日本語の響きが好きで4年ほど前から日本のアニメソングを中心にカバーしてYoutubeにアップする中で、今や130万人の登録者を得るまでの人気になったようです。
【Rainych プロフィール】
rooftop
2020年4月、ドージャ・キャットの「セイ・ソー」の日本語カバーがドージャ・キャット本人から大絶賛されたことにより、一躍話題になる。同年8月にはザ・ウィークエンドの大ヒット曲「Blinding Lights」を日本語でカバーした動画が、同じくザ・ウィークエンド本人から称賛されるなど、快進撃はとまらない。
そんな彼女が歌う「真夜中のドア/stay with me」はインドネシアからアジア、そして世界に一気に拡散。透き通ったボーカロイドのような美しい歌声とヒジャブを纏ったキュートなルックスが印象的でクセになります。
違和感ない流暢な日本語で歌い上げていますが、実は本人は日本語は全く話せず、読めないというのがまた面白い。
彼女のチャネルで公開されている過去動画を遡ると、本人が「歌ってみた」系の動画を多数アップしていますが、今回の「真夜中のドア~stay with me」のMVは明らかにプロフェッショナルな出来栄えです。
これも不思議と思い調べてみると、実は既に日本のレーベルが彼女に注目して、日本でデビューしていました。今回のカバーが2曲目で、MVは中国のクリエイターが手掛けているそう。簡単に国境を超えて世界の才能がコラボする時代ですね。
ドージャ・キャット、ザ・ウィークエンドという二組の全米No.1アーティストからの賛辞を受けるなど、今、世界を驚かすキュートなカバーモンスターことRainych(レイニッチ)の「Say So -Japanese version- tofubeats Remix」に続くカバーシリーズ第二弾は1979年松原みきのヒット曲「真夜中のドア/ STAY WITH ME」。
アレンジはTikTok発の大ヒットナンバー「summertime」を送り出したevening cinemaの原田夏樹。Rainychもこの「summertime」のカバー動画を投稿して話題となっています。
独特のドリーミーなサウンドとRainychのキュートなボーカルが絡み合う新感覚なシティポップチューンに仕上がっています。また、今回のミュージック・ビデオは中国・北京出身の人気マルチクリエイター【静電場朔(DiAN)】が率いるクリエティブレーベル【大宇宙釀】が制作。Rainych本人も出演したMVは今の季節にぴったりの温かみのある、レトロ且つロマンチックな映像となっています。
インドネシア×日本×中国、アジア三つの国によるクリエイティブの結晶をお見逃しなく。
ニューズウィーク日本版
世界的に80年代シティ・ポップが注目されている今、竹内まりやのPlastic Loveも各国で人気急上昇らしいですが、彼女が2020/4にしっかりカバーしていました。このバージョンも良いですね。
すっかりファンになってチャンネル登録してしまいました。
2021/3/26には山下達郎のRIDE ON TIMEもカバーされました。学生の頃、カーステレオのテープ音源を擦り切れるほど聴いていた日々を懐かしく思い出しました。これからますます日本のcity popが世界で発掘されていくことでしょう。
ストリーミングによる世界での拡散
今回のヒットのきっかけがYoutuberなら、世界への拡散を担ったのがストリーミング系の音楽配信サービスです。
レイニッチのカバーでこの曲を知った人たちがApple MusicやSpotifyで原曲の松原みきバージョンを発掘し、各国のキュレーター達がプレイリストに載せて、また多くの人たちに届き、繰り返し再生される、といったサイクルが世界規模で広がったのだと思います。
どこか懐かしいメロディー、でもいま聴いても古さを感じさせない完成度の高い楽曲。
発売から40年を経た松原みきのシングル「真夜中のドア Stay With Me」。この楽曲が、Spotifyバイラルチャート「グローバル バイラルトップ50」で急上昇し、トップ3にランクイン(12月2日~3日時点)した。往年の邦楽曲としては、例のない快挙である。(中略)
Spotifyのグローバル・バイラルチャートで3位に急上昇、世界17か国のローカル・バイラルチャートにもランクインしたと見られている。
また、Apple MusicのJ-Popランキングでもこの2週間で記録を伸ばし、1位を獲得した国は12か国から50か国に。トップ10入りした国は47か国から92か国にそれぞれ増加した。いま世界で「真夜中のドア Stay With Me」旋風が起きている。
ARBAN
ご本人は残念ながら2004年に44歳の若さで子宮頸がんにより亡くなったそう。デビューから40年後に世界がこの楽曲を再発見し、ここまで広く聴かれることになるとは本人は夢にも思わなかったことでしょう。
インドネシア人のYoutuberが火をつけて、SNSでグローバルで共有され、ストリーミングサービスで世界中に知られるという今回の流れは、テクノロジーで音楽の楽しみ方がより深く進化し、また普遍的に価値があるものは言語や文化の壁を軽々と超えてグローバル規模で一気に拡散することを実感させられました。
ポニーキャニオンによる復刻盤
この流れを受けて、版元のポニーキャニオンは復刻盤(アナログレコード)を限定生産・発売するそうです。
シティ・ポップ名曲として、最近では、中島愛やMs.OOJA、藤井風らのほか、インドネシアの人気YouTuberのRainychまでがカヴァーし、国内外での再評価が著しい松原みきの大ヒット・7インチ・シングル「真夜中のドア/Stay With Me」と、1stアルバム『POCKET PARK』の復刻盤の予約が、ポニーキャニオンが新たに手掛けるWebサービスPOP(パッケージ・オーダー・プロジェクト)にてスタートしています。(中略)
このたび、40年前の発売当時に折りたたみ封入されていた特選ポスターや歌詞カードなども再現し、完全復刻盤として発売する予定となっています。
現在では入手困難な商品や廃盤により発売を終えた商品の復刻を行う、POP(パッケージ・オーダー・プロジェクト)は、募集期間内にオーダー数が規定数に到達した商品のみが発売決定となるシステムのため、購入希望の方は早めの予約が推奨されています。
CD Journal
テクノロジーの進化により、かつては知られることのなかったRainychのような世界の片隅の才能が見い出されること、そして時間の流れとともに忘れ去られてしまう過去の名作が発掘され再評価されるというポジティブな潮流を感じます。
今後、世界からどんな才能が出てくるのか、どんな作品が発掘されるのか、楽しみです。