読書メモ

理不尽に勝つ

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ラグビー元日本代表監督の平尾誠二さんが理不尽について語った本。

生きていると誰しもが「理不尽だなぁ」と感じることは多々あるものですが、平尾さんは部活動の先輩や監督による理不尽な指導に始まり、日本代表監督時代にマスコミから受けた誹謗中傷に至るまで、理不尽については人一倍感じてきた人生だったと思います。

何よりもラグビー日本代表チームのワールドカップでの大躍進を見ることなく、ガンの発覚後たった1年1ヶ月で急逝したことこそ、理不尽な運命だったことでしょう。

ラグビーのエピソードが中心ですが、そのまま仕事や子育てにも通じる本質的なメッセージが綴られています。

仕事で無茶な要求をされたり、いわれのない責任を押しつけられたりして、理不尽な気持ちを抱いている人は多いかもしれない。

神戸製鋼でラグビー日本選手権7連覇を達成し、ラグビー日本代表監督、日本サッカー協会理事を歴任した著者。その陰には、不登校、『スクール・ウォーズ』の舞台ともなった伏見工業高校での他の部員との軋轢、日本代表監督でのプレッシャーなど数々の試練があった。著者は、理不尽な状況に直面した時、どのように乗り越えてきたのだろうか? 

内容例を挙げると、
◎媚びない、キレない、意地を張らない 
◎妥協せず、折り合いをつける 
◎「怒らない」と「怒れない」はまったく違う 
◎「自分だけ」と思い込むな 
◎瞬間瞬間にすべてを賭けてすべてを出し切る 等々

 また、著者は「理不尽」を経験するからこそ、人は磨かれ成長する、と言う。そしてリーダーとして選手や部下に「理不尽」を与えるならば、必ず成果に結びつけろ、と言う。ビジネスマン必読。

Amazonより
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勝手に自分を正当化しない

実力以上の無理難題なテーマを与えられたとき、思い通りに事が進まないとき、「何で自分だけがこんな目にあわなければならないんだろう」という心境になります。

僕も今まで何度もこうした壁にぶち当たり途方にくれたことがあります。

いま思い返すと、そんな時は悩んでも仕方ないので「誰がやったってこんなことできっこない」と半ば開き直って取り組んでいたように思います。

p.40 私の経験から言って、人の責任にする選手は、どんなに才能を持っていていたとしても、それ以上は伸びない。たとえば、ある選手の、あるまずいプレーが原因で試合に負けたとしよう。その時、「あいつがこう動いていれば勝てたのに……」と結論づける選手はそこまでだ。敗因を外に求めているのだから、自分がそれ以上向上するわけがない。(中略)
客観的に見ても、ある選手のタックルミスが敗因になったとして、タックルミスした選手に冷たい態度を取らずに「あの時、タックルが不得意なあいつにタックルさせたのは酷だったかもしれない。あいつがタックルに行かなければならない状況にしたこと自体が問題だったのだ」と総括できるような選手のことである。(中略)
そんなふうに、自分の責任を放棄しないで、どうすればそれを克服できるかを考えられるーーそういう選手が伸びるのだ。

こうした開き直りは諦めとも言えます。平尾さんは「敗因を外に求める」のは「自分がそれ以上に向上するわけがない」ので「自分の責任を放棄しないでどう克服できるかを考える」ことが大切と説きます。

自分がいかに甘かったか、勝手に自分を正当化して逃げていたか、ぐさりと胸に突き刺さりました。

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理不尽をどう与えるか

自由とは時間とも言い換えられます。

与えられた時間をどう過ごすかは本人次第。今の自分があるのは、それまで積み重ねてきた時間の結果でしかありません。

p.108 三年目に主将に任命された時、私が最初に行ったのは、練習時間の効率化だった。
それまではほぼ毎日練習をしていた。とはいえ、当時は全員が社員だったから仕事優先。それは当然だけれど、そのことを練習に出ないことの言い訳にすることもあった。そのため、部員全員が揃わないことが度々あったし、練習をしていても、いわば「練習のための練習」になっていると感じていた。だから私は決めたのだ。
「練習回数は週三日にする。その代わり、絶対に出てくるように」
一回の時間も二時間ほどとそれまでより短くした。(中略)
「自由」とは「時間」だといっていい。自分の意思で使える時間のことだ。(中略)
決まりごとがあることで、自由のありがたみがよりリアルに感じられるのではないかと考えた。自由を取り扱えるのは自分に厳しく、モラルが高い人間だけであること、そういう人間であるからこそ自由という環境のなかでより力を発揮できることを体感してほしいと考えたのだ。
実際、その後部員たちは、本当の自由を獲得し大切にした。神戸製鋼が日本選手権で七連覇を達成できたのは、部員たち一人ひとりにそういう意識があったからこそだったと思う。

例えば、時短勤務で子育てと仕事を両立している社員は非常に限られた時間で結果を出すプレッシャーが一般社員よりもずっと大きい。

こんな環境では、よりシビアに自分がやるべき仕事とスルーすべき仕事を選別して効率的な仕事のやり方を模索する必要があります。

今回のコロナに起因するテレワークも同様に、制約がある中で本当に必要な仕事とは何か、改めて棚卸しして仕事のやり方を見直すよい契機になりました。

あえて制約を設けることで自分の優先順位に気づき、大切なことを大切に扱う。その結果が人生の満足度、幸せに繋がっていくと思います。

コメダな朝

日曜日の朝、期末試験の勉強に勤しむ娘に時おり勉強を教えながら、いまこのブログを書いている時間に幸せを実感します。

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理不尽な仕打ちが日本代表の闘争心に火をつけた

マスコミや匿名のSNS等による有名人への誹謗中傷は理不尽の極みと言えます。

p.175 ワールドカップ・南アフリカ大会(2010年)直前の国際試合で四連敗した時は、メディアやサポーターから、批判どころか人間性を否定するような罵詈雑言を浴びせられた。のみならず、本来は岡田さんを支えるはずの日本サッカー協会内部にも、岡田さんの監督としての脂質を疑問視するような雰囲気が漂った。

時にその苦しみから自殺にまで追い込まれる人まで後を絶ちません。

我々一般人には想像すらできない理不尽で苦しい状況。普通の精神では持ちこたえられないでしょう。

p.176 開幕直前であっても躊躇することなく、キャプテンマークを中澤佑二選手から長谷部誠選手に与えたし、なかば不可侵の存在だった中村俊輔選手もレギュラーから外した。
「日本代表が勝つためにどうすればいいか、世界中で誰よりも考えているのはおれだ。そのおれが、”勝つためにそうする”と決めたんだ。納得してほしい」
あえて鬼になって迫ったそうだ。
岡田さんによれば、選手が自分なりに考えて、「こういうサッカーをやりたい」と申し出てきたことがあったという。もちろん、まずは選手の言い分を聞く。正しいと思ったことは採り入れもした。でも、自分の目指すサッカーと相いれない場合は、こう言って絶対に聞き入れなかった。
「おれはきみに、こうしてほしいと思っている。きみは能力もある。だからおれに従ってやってくれたら、ものすごくうれしい。でも”冗談じゃない、やっていられない”と思ったら、残念だけどあきらめるから、チームから出ていってくれ。なぜなら、おれは代表監督として全責任を負っているんだ」
この時、選手の肩をたたいて、「頼むな、やってくれよ」と言ってしまったら、絶対にチームはまとまらないんだよーー岡田さんはそう言っていた。
もちろん、選手が頭にきていることはわかっている。けれども、そのくらい強い決意で向かい合えば、相手は感じ取ってくれる。事実、「出ていってくれ」と言われた選手は、「申し訳ありませんでした。もう一回やらせてください」と懇願してきたそうだ。

平尾さんが親交の深かったサッカー日本代表の岡田元監督のエピソード。

この強さの源は、「日本代表が勝つためにどうすればいいか、世界中で誰よりも考えているのはおれだ」という自負だったと思います。

どんな課題であれ、それについては一番の当事者として自分が逃げずに真正面から向き合っているか?

腹を据えて、覚悟を決めて、自分が課題に対峙していれば、こうした心境に至ることができるはずです。

折に触れて読み返したい、平尾さんの熱いメッセージが込められた一冊です。

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